パトリック・ンゲマ・ンドング
パトリック・ンゲマ・ンドングさんは、アフリカ全土に聴衆がいるラジオ局「アフリカNo.1(107.5Mhz)」の人気パーソナリティだ。20年以上続いている長寿番組、「不思議な冒険 L’aventure mystérieuse」は、不思議な物語を語るラジオ劇。現代アフリカの都市で、強盗2人が呪術師に邪悪な精霊を呼び出してもらい、その助けで難なく銀行の金庫に侵入するが、精霊にだまされる話などを、俳優たちが演じている。脚本はパトリックさんが書く。
もう一つの持ち番組「トライアングルTriangle」も長く続いている。こちらでは、リスナーの質問に答え、アドバイスを与えている。毎週、400通のメールと手紙が届く。呪術、ニュメロロジー(数秘術)、占星術、夢解き、精神世界と、テーマの範囲は広い。その中から、蛇がテーマの夢解きを集めたものが、一昨年、本になった。その名も「蛇の夢 Rêve de serpent」。アフリカ人が蛇の夢を見る時は、なにがしかの意味があるという。蛇が悪い知らせを意味していたら、それを中和させるための伝統的方法をアドバイスする。また同じ蛇でも、地域によって意味が違う。「中央アフリカでは呪術を、西アフリカではパワーを意味します。蛇は、悪い意味にも良い意味にも解釈できるんですよ」。日本には、蛇が女性に変身して人間の男と結婚する話があるが、アフリカでは蛇が女性になって、夢の中で男性と交わることがあるそうだ。毎日7千人の人たちがこの番組を聴いている。呪術に関する相談も多い。「呪術や魔術はパワーです。しかし、知識の裏づけがあるからこそパワーになる。魔術的な力そのものは変わらないが、使う人によって良くも悪くもなるんです」未来には、肯定的な考えを持っている。「21世紀は、精神性が日常の生活のすべてに反映される時代になるでしょう」
パトリックさんは、フランス人の母とガボン人の父の間に生まれた。ガボンでリセを終えた後、フランスの大学で学び、米国で比較文学の修士号を取得。研究の一環として、宗教学と心理学も修めた。ガボンに戻って文学教師の職を求めたが、空きポストがない。「職が見つかるまでの臨時としてラジオ局に勤めたつもりが、いつのまにか20年もたってしまった」と笑う。空手4段の武術家であり、アジアの文化への造詣も深い。アフリカにとどまらず、世界の精神世界に精通しているのがパトリックさんの強みだ。(羽)
Triangle:月-金15h30 -17h00
L’aventure mystérieuse:日曜21h00-22h00
ミュージシャンの友人と、バスチーユ広場近くにある噂のタロット占いカフェ、その名も「名のないバー」に行ってみた。事前の電話確認で、16時半には来ないと順番が回ってこないよと忠告されたので、時間かっちりに到着。ところが、名のないバーは… シャッターを固く閉ざしていた。私たちが一番乗りのようだ。待つこと小1時間、おもむろにシャッターが上がり始める。開店だ!
薄暗い店内は、クリスマスのようなハロウィンのような、何とも形容しがたい不思議な飾りつけが天井まではい上がっている。小柄でちょっと魔女っぽいマダムに年代物のソファ席へ案内され、とりあえず赤ワインで乾杯(無料で占いを受けるには、飲み物をオーダーする必要あり)。まだ到着していない占い師を待ちつつ、おしゃべり。周りのテーブルが占い目当ての客でうまり始めたころ、窓際の席に占い師らしき2人の男女が座った。1番の方はこちらにどうぞ。
私たちは、待ってましたとばかりに占い師が待つテーブルに急ぐ。自己紹介の後、知りたいことは何かと聞かれ、カードをきる。その中から数枚のカードを抜き取り、分析開始。
結果は…占いを介した悩み相談のような。彼らは未来を透視することができるわけではない。迷いごとがある時、自分が抜き取ったカードが導く方向を彼らなりの方法で解釈し、道しるべを見いだす助け船を出してくれるという印象を受けた。私の占い師さんは、自分の個人的経験などを熱く語り、励ましてくれた。
占いは10分程で終了。私たちは赤ワインをおかわりしつつ、ついついお互いの占い結果を暴露してしまい、驚いたり納得したり、励まし合ったり。気がつけば時計の針は21時を回り、後ろを振り向けば、さっきまでいた2人の占い師はこつ然と消えていた。
おしゃべりと赤ワインですっかりいい気分になった私たちも、怪しく、そして不思議と優しいエネルギーに満ちたこの空間をあとにした。(貴)
Le Bar sans nom :
49 rue de Lappe 11e
Tel 01 4805 5936
占いは毎週火曜日18時頃からふいに始まる。数人の占い師が交代で占いをするので、毎週同じ占い師さんに出会えるわけではない。確実に占いをしてもらいたい場合は、16時半頃からお店の前で根気よく待つこと。
私の未来をみてもらった。
信心ゼロ、雑誌で占いの欄があれば必ず飛ばす私が、「一度くらい」と軽い気持ちで有名な霊能者にみてもらうことに。場所はイタリー広場駅近くのアパート。「voyant(霊能者、透視能力者、占い師)」という看板の類は一切なし。呼び鈴を押すと、中から青い瞳の美青年風男性が登場した。名前はダヴィッド・モクさん。霊視の仕事を初めて16年だという。
デスクを挟んで向い合うと、彼は霊視の順序を説明した。「まずあなたについて感じることを10分くらいで伝えます。それが正しいと思えばその先に進みましょう」。もしここで間違っていると私が判断すれば、お金は払わず終えてよいという。半信半疑でうなずく。デスク上には紙が1枚。ここに私は生年月日と氏名を記入する。霊視が始まる。開口一番、「あなたは今の仕事に満足していない。何か演劇とかアートのような分野の記事がもっと書きたいはず」。えーっ、図星。私が好きなのは映画関係なのでほぼ当たりだ。そして仕事に関することを次々当てていく。さらに、「日本の家族関係を見ると、何かが壊れているのが見える」と言い、紙の上にバッテン印を重ねて書いた。これも思い当たりが大ありだ。驚いているうちに、あっという間に10分が経つ。もちろんそのまま霊視を続けてもらう。「骨盤には注意して」。確かに、私は長年のヘルニア持ちだ。「でもガンなどの大病はしないです」。万歳!と喜びも束の間、「ひとつ、率直に気になることを言います。それは…○○○(筆者、言霊が怖いため自己検閲)」。ガーン、それはまずい。思いっきり動揺。それから私は気になる自分の3歳になる娘について聞く。モクさんは、彼女の名前と生年月日を書くように指示。写真を持ってくればなお良かったとのこと。「心配いらない、あなたの娘は事故に遭うこともなく問題なく育つ。将来ダンスか絵の勉強でロンドンに行く」。へー、妙に具体的過ぎてにわかに信じ難いが。そしていくつもの動揺を繰り返すうちに終わりの時間に。
初めての霊視体験はとても満足できるものであった。古今東西人が占いや霊視にすがる気持ちが身にしみてわかった。きっと、未来を自分で切り拓いていこうとする強い意志と勇気があれば、モクさんの言葉は強く後押ししてくれるものになるのだろう。ただし、現実や自分の心の闇を素直に見つめる勇気がない時は、まだ会わない方がいいかもしれない。(瑞)David Mocqさんによる霊視
面と向っての霊視は1時間170euros。電話なら30分で90euros、1時間170e。また企業向けの人材採用アドバイスも実施。
7 rue Edouard Manet 13e 01.4423.7996
http://www.davidmocq.com/