この春以来、移民家族の多い地区の幼稚園や学校の前で先生や児童、父兄らが「○○ちゃんと家族の国外退去に反対!」と書いた横断幕を掲げ、通行人に抗議のビラを渡していたシーンに出会った人も多いだろう。リモージュやポワティエなどの地方都市では90人余りの不法滞在の親たちがハンガーストライキまでして滞在許可を要求している。 サルコジ内相が県知事に宛てた6月13日付の通達で不法移民家族の滞在認可の最低条件として、1/親のどちらかが最低2年在仏、2/子供の1人が05年度9月以来就学、3/子供の1人が13歳未満で入国、4/その子と母国との関係が薄い(母国語を話さない)などが挙げられる。しかし同通達は、昨年秋以来就学中の子供をもつ不法滞在家族のうち、子供の学年中に退去命令が下った720所帯、約2500人を対象としていた。不法移民家族の許可申請期限は8月14日だが、すでに2万件の申請が提出された。7月24日、サルコジ内相は、そのうちの6000人に滞在許可を与えると発表。 フランスでは不法入国者でも市役所で子供の就学登録はできるが、警官の目を避けて暮らす不法移民家族は約5万人にのぼる。その中には、14歳で家族と入国し、13歳未満に入国してなかったことで退去命令を受けた19歳のモロッコ人高校生、子供が4人いる家族で04年にポーランドに亡命申請していたことでジュラ県庁から退去命令が下ったチェチェン出身家族…。夏休み中に地方の奥地でも退去命令が下っている移民家族が続出しているなかで、教員・父兄が中心となって「子供狩り」阻止運動を行っているのが〈国境なき教育網RESF〉団体。彼らはメールを交換し合い、警察による子供・家族の摘発時に市役所や県庁前に集合し連帯行動を行っている。また人権保護団体の呼びかけで、ドラノエ・パリ市長を始め左派政治家や有名人らが、これらの子供たちの後見役を買ってでる「法律不服従」キャンペーンを繰り広げている。彼らは、大戦中、ユダヤ人をかくまったのと同じレジスタンスを、と市民に呼びかけている。 こうした市民運動を逆手にとり、サルコジ内相はアルノ・クラスフェルド弁護士を調停役に任命した。彼は父親セルジュ・クラスフェルド氏とともにナチス裁判に関わってきた弁護士として有名だ。調停者クラスフェルド氏の任務は、滞在許可申請家族の「フランスへの愛着度をはかる」ことだそうだが…。 子供のいないカップルや独身不法滞在者の強制退去措置を続行する同内相は「家族への人道的対応」と同時に「厳格さ」を掲げ、ルペン支持者に秋波を送ることも怠らない。(君) |
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