去年はジュール・ヴェルヌ没100年ということで、ヴェルヌの生まれ故郷ナント、ヴェルヌが生涯を閉じた町アミアンをはじめとして、フランス各地で様々な記念イベントが催され、子供のころ夢中で読んだ『十五少年漂流記』や『海底二万マイル』などを懐かしく思い出した人も多いだろう。 シリーズ中最も有名な小説のひとつ『80日間世界一周』は、映画やテレビドラマ化は何度もされているけれど(2年ぐらい前にはジャッキー・チェンが主演した作品もありましたっけ…)、舞台での公演は久しぶり。 「世界一周を80日間で行ってみせる」とロンドンの社交クラブ仲間に豪語する貴族フィリアス・フォッグが、名誉と大金を賭けた大勝負に挑戦。フォッグのフランス人の従僕パスパルトゥー、フォッグを怪しみ旅の間中つきまとうスコットランドヤードのフィックス警部、フォッグのおかげで命拾いをするアウダ姫などの主要人物をはじめ、イギリス人、エジプト人、インド人、中国人、アメリカ人…という80人以上の登場人物が、たった5人の役者によって演じられていく。 80日間の旅行が舞台上では1時間20分足らずだから、それなりの工夫が必要で、演出家セバスチャン・アゾパルディは、舞台に設置された箱の中で各シーンを展開させる、というとてもよいアイデアを思いついた。カーテンを開閉する度に、場面がそして場所が移り変わっていくという仕組み。アゾパルディの演出は、サシャ・ギトリの戯作『Faisons un reve』(4/1号で紹介)の時と同じく、会話の軽妙さ、テンポの良さが心地よく、ヴェルヌのエスプリを尊重しながら現代の風潮や時事を盛り込み、抱腹絶倒の場面を作り出すことに成功している。小学生から十分楽しめる。(海) |
9月17日迄。火-土/20h(8日以降21h30)。日/15h。8€-30€。 Lucernaire : 53 rue Notre-Dame-des-Champs 6e 01.4544.5734
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D A N C E ●Benoit Lachambre “Desire defait” 1960年生まれ。カナダ、ケベックのアーティスト、ラシャンブルの1999年に初演された評価の高いソロ作品。映像、美術インスタレーション、そこに存在する身体を通して「こころが崩壊していくさま」が、演劇的しかも私小説的に綴られる。 「自らの思索、そしてそこから顕われてくる身体の動きの結晶である、この身体に流れているエネルギー」が表出される時、彼自身の今までの人生に、同じく積み重ねてきた表現者としての経験が重なる。常に作品を通してのコミュニケーションを探り続ける彼は言う…「僕のつまずき、その上に観客はそれぞれ自身のつまずきを見る。そこで見つめられるそれぞれみんなのつまずき、それこそが交流の醍醐味にもなり得るのでは?」。メグ・スチュアートなど他の振付家との共作やアトリエでの教育活動で培われた、彼の軌跡が窺える。(珠) |
5/31~6/6(4日除く)/21h。19€/12.5€。 Theatre de la Bastille : 76 rue de la Roquette 11e 01.4357.4214 |