『Sisters in Law』、義理の姉妹という英語ですね、フランス語だと “belles sマurs” になってしまいますが、英語を直訳すれば「法律上の姉妹」。イギリスの女性映画監督、キム・ロンギノットとフローランス・アイシのコンビが撮ったこの映画、観てゆくとすっごく納得の題名です。 アフリカはカメルーンの小さな町の裁判所が主なる舞台。法廷もののドキュメンタリーは面白い! というのはレイモン・ドパルドンの諸作品でも経験ずみ。原告と被告の言い分を聞いているだけ、表情を見てるだけで、フィクション映画にはかなわない面白さがある。それは、その瞬間を(もし嘘をついてるにせよ)本当に生きてる人間を目の当たりにしてしまうからだ。しかも、裁判とは物事に白黒をつける場だから、映画に欠かせないサスペンス的な要素もある。 ドキュメンタリー映画のもう一つの成否の鍵は対象となる人物の魅力。『Sisters in Law』に登場するのは、太っちょの黒人のオバサンたちばかりだけど、みんな魅力がある。検事も判事も弁護士も裁判長も民事訴訟の相談係も、主なる登場人物はみんな女性。そして、まだまだ女性の地位が低く、イスラムの影響が強い国で勇気をもって裁判を起こす女性たち。 この映画は、はっきりと「女性解放運動」的なカラーをもっている。ロンギノットは『The good wife of Tokyo』などというドキュメンタリーも撮っていて、世界中の女性の在り方を追っかけている。検事も判事も弁護士も裁判長も民事訴訟の相談係も信念をもって仕事をしているから小気味よい。そして、夫の暴力を訴えていた女性が正式に離婚を認められた瞬間の心底うれしそうな表情が忘れられない。本当に苦しかったんだろうなー。公開日の3月8日は〈国際女性デー〉でした。(吉) |
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●Gus van Sant “Last Days” ”Les Inrockuptibles” 誌でも昨年のベストワンに挙げられたガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』をしのぐ傑作『ラストデイズ』がDVDとして発売された。 麻薬中毒者のリハビリ施設から脱走したブレイク(マイケル・ピットが素晴らしい)。ぶつぶつ独り言を言いながら森の中をさまよい、渓流で泳ぎ、たき火をしながら夜を過ごす。友人たちが寝起きしている家に戻るが、精神の彼岸に渡ってしまった彼の存在は、周囲と隔絶している。自分の内面とだけ向かい合った男だけが感じることのできる森のざわめき、渓流の冷たさ、夜の匂い…。長回しで撮られた、銃で自殺する前に歌うシーンに息をのむ。この作品は、やはり銃で自殺したニルヴァーナのカート・コバーンに捧げられている。(真) |
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