「残虐なギャング」の動機は反ユダヤ主義?

 1月21日、パリ11区ヴォルテール大通りにある携帯電話店の店員イラン・アリミさん(23)が携帯で若い女性に誘われ、彼女に同行して行く途中、3人の男に拉致され、郊外バニューの公団住宅の一室に、さらに地階ボイラー室に監禁され3週間、10数人の若者に刃物やタバコの火によるサディスチックな拷問を受け、2月13日、エソンヌ県サント・ジュヌヴィエーヴ ・デボワ駅付近の道路脇で、軽油をかけられほぼ全身火傷の瀕死状態で発見されたが病院に運ばれる途中死亡した。
 テレビは、拉致のおとり役をつとめたブロンド女性の人相画を報道。翌日、その女性オドレー(24)が警察に自首し、共犯容疑者の名をあげ13人が逮捕された。主犯とみられる仏国籍をもつユスフ・フォファナ(25)容疑者は2月中旬に母国コートジボワールに逃亡。22日、現地警察に逮捕され、3月4日、フランスに身柄が送還された。
 フォファナは18歳から強盗罪などの前科があり、バニューの団地地区で学校・社会から脱落した青少年らのボスとして、若い女性をおとりにギャングまがいの拉致・脅迫行為を行っていた疑いが濃厚に。
 捜査班は、02-05年にローレックスやリーボック、IBM他、数社の社長らが〈パレスチナ人民解放戦線〉や 〈コルシカ解放グループ〉 の名で3~50万ユーロを強要する脅迫文を受け取り、何人かの自宅前で起きた爆破事件などと関係があるのではと調査を進める。
 しかし「バニュー事件」の共犯容疑者の大半が動機として「アリミはユダヤ人で金をもってるから。家族が身代金45万ユーロを払えなければ、ユダヤ人団体が代って払うだろうから」と供述したことから、反ユダヤ主義的犯罪容疑が浮き彫りに。
「イランがユダヤ人でなかったらあのような無惨な殺し方はされなかったろうに」と〈反ユダヤ主義犯罪〉に怒りと恐怖心を爆発させるユダヤ人社会を前にシラク大統領は2月23日、9区のシナゴーグでの追悼式に出席した。が、一部識者のあいだで「民族共同体間の対立を避けるなら、元首として礼拝所に赴くのは問題では」と批判の声も聞かれる。
「ユダヤ人=金」という偏見の根は深い。中世時代、彼らは農作も土地・武器の所有も禁じられ、許されたのは金貸し業。長い迫害の歴史をもつユダヤ人だが、今日、欧米社会に完全にとけ込んでいる。一方、仏社会で移民を祖先にもつ郊外の若者たちが人種・社会的被差別者として、同時にパレスチナ問題を絡めユダヤ人を憎む、新しい反ユダヤ主義の現れ といえないか。(君)