Eva Peron


 1960年代末にアルゼンチンからフランスに亡命してきた作家コピが、1950年代にアルゼンチン貧民を救済するマドンナと慕われつつガンで早逝したエバ・ペロンの最期の数日を、想像と皮肉たっぷりに描いたのがこの戯作。
 ガンに蝕まれた自分はもうじき死ぬ! と大騒ぎして自棄をおこすエバ(エビータ)を、無口で存在感の薄い夫のペロン大統領、死神のようなエバの側近、娘の病よりも遺産を気にするエバの母親、そしてエバの気まぐれにあたふたし女中のようにこき使われる看護婦が取り巻く。聖エビータも、コピのメガネを通すと偽善の固まり、見掛け倒しのとんでもない女になる。おまけに男優が演ずるエビータとその母親は、目をみはりたくなるような女性の醜い一面を、グロテスクなまでに強調して表現する。けれどもその一方で、神格化された伝説の女神がとてつもなく人間的に感じられ(個人的に付き合うのはごめんだけれど)、彼女(=彼)に親近感すら覚えてしまう。そう、私が愛してやまないコピの魔力はここにある。
 今回紅一点として出演する看護婦役のエリーズ・ヴィジエがとてもいい。一見目立たないけれど圧倒的な存在感で、モラルゼロ、矛盾だらけで不条理に富んだコピの世界にごく自然に溶け込んでいる。最後のどんでんがえしが見もの、苦い結末はいかにもコピらしい。主演(エバ役)と演出はマルシアル・ディ・フォンゾ・ボー。(海)

3/15迄(火~土19h30、日マチネ15h30)。12.5~19
Theatre de la Bastille :
76 rue de la Roquette 11e 01.4357.4214

●Le Roi Lear
リア王の悲喜劇が、20世紀初め、マフィア風財閥一家で繰り広げられる。リア王ならぬ市民リア役を演ずるのはミシェル・ピコリ、見逃す手はない!演出はアンドレ・エンゲル。3/26迄。Theatre de l’Odeon : 01.4485.4040

D A N C E
●Joseph NADJ “LAST LANDSCAPE”
 ジョゼフ・ナジのジャズパーカッショニストとの共演のソロ作品。彼のこれまでの多くの仕事のように、愛する文学作品作家へのオマージュとしての自由闊達な表現とは異なるアプローチを試みる。「自身の内面から出てくる何か」、まずはひたすら自身を見つめること、と彼は語る。
 「外へ出て、自然の中に、自分の内面の感覚を研ぎ澄まして、そこから出てくるものに自分の身体を解放していった。季節ごとに何度も出かけては、夜明けや夕暮れの中に身を置いた。その風景は自分の故郷でのものにとても近い、原風景とでも言えるものだった」。即興性の強い身体の動作が結晶する、絵画と舞踊の融合という表現、そこに加わる他者としての音楽。「リズムは手に描くことを促し、それは次第に全身で、いつしかその描く行為にすべてがのみ込まれるほどに」。その果てにさらに見えてくる風景を見つめたい。(珠)
3/14、16-21、23-26/20h30(日15h)。
12.5
~21
Theatre de la cite internationale :
17 bd Jourdan 14e 01.4313.5050