寡作の完璧主義者(30年間で4作目)テレンス・マリック監督の新作。描かれるのは、イギリス人開拓者ジョン・スミスと、アメリカ先住民族の娘ポカホンタス姫の運命的な愛だ。 映画は主人公の細やかな心の動きにそっと寄り添いながら、同時に人間を壮大な自然と歴史のうねりの中に容赦なく投げ出す。そして節々で挿入されるモノローグとピアノの旋律。物語が進むにつれ、メランコリックな気分はいよいよ盛り上がる。「森では夢だと思ったが、この出会いはただ一つの真実だった」。そんな甘い台詞も、気がつけばすんなり全身で受け入れ感動に震える自分がいる。思えばかなりワンパターンなマリック節にまんまとはまりつつ、最後には綺麗すぎる愛のドラマにしっかり満足してしまう。またもや賢者顔な監督の罠に落ちたのか。(瑞) |
![]() |
●L’Ivresse du pouvoir クロード・シャブロルが再びイザベル・ユペールと組んで、1990年代半ばに巷を騒がせた石油会社エルフ事件を彷彿させる騒動を描く。情け容赦なく悪を暴こうとするユペール検察官、公金横領と贈収賄に首までつかった大企業の社長たち、そして明らかに事件と関わりを持つ政府関係者…と、皮肉とユーモアを交えながら、人間の悲喜こもごもが快調なテンポで語られていくのが愉快。(海)
|
|
●Toi et Moi 以前オヴニー紙上で連載もあった写真を使ったラブストーリー、ロマンフォト。本作にはロマンフォト作家とチェロ奏者の姉妹が登場し、不器用な現代恋愛事情をコミカルに体現。ロマンフォト的キッチュさを味方に、原色がまばゆい夢見る夢子好みのファンタジーワールドが広がる。観る人により解釈が別れる結末も悪くない。監督はジュリ・ロプ=キュルヴァル。(瑞) |
![]() |
|
|
Sara Forestier (1986-) パリ郊外に住む中学生の恋愛遊戯を、マリヴォーの戯曲に重ね描いた傑作『L’Esquive』(04)。批評家に激賞された本作品で、快活なヒロイン、リディアを演じていたのが、サラ・フォレスティエだ。クルクル動く猫のような瞳、機関銃のように連打される若者言葉。弾むような彼女の存在感は、単なる役を飛び越え、フランス映画の新しいイコン誕生を告げるものとなった。その年のセザール新人女優賞は、当然のように彼女の手におちた。 その後彼女は、ミシェル・ドヴィル、クロード・ルルーシュ、ベルナール・ブリエら、安定感のある有名監督作品に好んで出演。だが端役ばかりで、彼女の溢れんばかりのエネルギーが、無駄に蒸発しているようにも見えた。 そんな心配を吹き消すように、今月ようやく彼女の主演作『Hell』が公開される。虚構のジェット・セット(富豪)的世界でお金を浪費し孤独を埋める、投げやりなパリジェンヌに扮している。少女の印象が強い彼女も、本作ではヌードも披露。大人の女優へと着実に脱皮を図っている。 さて、他の多くの俳優と同様、フォレスティエも監督業に並々ならぬ興味を抱く。現在は、ギャングスター映画のシナリオ書きに夢中のよう。そういえば彼女の理想の男性はアル・パチーノであった。(瑞) |
![]() |
|
|
