世界中から多くの人が訪れるシャモニーには、何人ものバイタリティ溢れる日本人が住んでいて驚かされる。外国人として居るのではなく、シャモニーの生活にすっかり溶け込んでいるこんな日本人は、ジャポネではなくてジャポニャールと呼ばれる。シャモニーの住人がシャモニャール、サヴォワに住む人がサヴォワイヤール、山岳部に住む人がモンタニャールということにかけた造語だ。そんなシャモニーを知りつくした皆さんに、色々と聞いてみました。
横山日出現さん
シャモニースキー学校講師ジャポニャール第一世代。「70年代のフラワー・チルドレンです」と日焼けした精悍な顔をほころばす。東京農大出身、農業技術者としてカナダに渡り、 1969年の夏休みに自転車で世界一周の旅へ。「ブドウの収穫の後カナダに帰る予定が、そのまま南仏のスキー場で皿洗いのバイトを続けていました」。山と雪に魅せられ仏国家検定スキー教師を目指す。「この資格を取るにはまず自国での資格が必要で5シーズン冬の日本に帰って資格を取りました」
1971年11月からシャモニー在。「ここの魅力は四季折々の表情と各ゲレンデにそれぞれの良さがあることでしょうか」
2003年には99歳の三浦敬三さんと一緒にヴァレ・ブランシュ(モンブランの氷河)を滑降。「去年は還暦の記念に息子と夏のモンブランを登頂しました」。高山植物から登山やスキーの歴史まで何でも知ってる横山さんがガイドする夏のモンブラン一周ツアーを企画中。「フランス・スイス・イタリアを通って1週間で歩く誰でも参加できるコースを考えています」とシャモニーの観光開発へ情熱を傾け続ける。(吉)
津田博さん
スネルスポーツ店勤務、在シャモニー30年「シャモニーにやって来たのは、山に登りたいから」。ドイツから1972年にやって来て2シーズン過ごした後、75年からシャモニーに移り住んで現在の仕事に。また、7月から10月の間はイタリア、オーストリア、ドイツなどの山のガイドをやっている。
「シャモニーの魅力はというと、何でもある、ごちゃごちゃした感じが落ち着くんですね。他の国へ出かけて帰ってくると、ホッとします」シャモニー滞在でのおすすめは、ラケット(カンジキ:写真)でのスノーハイキング。ガイドさんと一緒に、動物の足跡をたどってみたり、氷瀑を見に行ったりできる。「初心者でも2時間くらいで回れますし、家族連れにもいいですね。ノンスキーヤーでもぜひ訪れて欲しいのがブレヴァンやラ・フレジェールです。冬でもロープウェイで山頂まで行かれますし、ここから眺めるモンブラン山群の眺めが好きなんです」
「おすすめのレストランはLe Panier des 4 saisons(258 rue Paccard)やLa Maison de Carrier、おいしいパスタが食べられるNeopolisかな」(月)
セキノ・ユキさん
ジャポニャルド第一号!セキノさんには雪が降る晩に会った。そして名前の「ユキ」が、雪にちなんでつけられたと教えてもらって、彼女が周辺の壮大な風景から抜け出て来た人のような気がした。登山家として東京からシャモニーを訪れて以来、この町に魅せられ定住を決めたお父さんと、フランス人のお母さんの、山や自然への愛が沸々と感じられるような名前だ。「スキーW杯で仏代表チームの選手だった妹はフジコというんですが、これも富士山にちなんでなんですよ」
ユキさんが生まれた日、地元新聞は、「初のジャポニャルド誕生!」と報じた。彼女は、現在は、シャモニーに行く人が必ずや世話になるであろう登山電車、ロープウェイ、高山のレストラン、エギュイーユ・デュ・ミディ山頂(3842m!)のカフェテリアなどを運営する会社「カンパニー・デュ・モンブラン」の営業ウーマンとして活躍中。北海道で働いたこともあるが「シャモニーがあまりにも美しくて忘れられず」故郷シャモニーに戻った。
山々の荘厳な景色を見ると、ユキさんのその言葉が頭の中でこだまする。(美)
石崎達也さん
レストラン「さつき」の共同経営者シャモニーを初めて訪れたのは1990年代初めのことだという。「当時はリヨンにあるフランスレストランで働いていました。スキー好きの私は、遠くないところにアルプスがあるのがたまらない魅力でよく出かけていたんですが、そのうちにシャモニーと出会うことになってその魅力につかれてしまったのです」
1994年に日本へ帰って高崎市でフランスレストランをオープンする。それから8年後の2002年に、シャモニーにある日本レストラン「さつき」の経営をやってみないかという声がかかる。「フランスに帰りたい、帰りたい、と思っていたちょうど矢先だったので、すぐに引き受けました」
「シャモニーにスキーで来たのなら、絶対にレ・グラン・モンテのゲレンデで滑ってもらいたいなあ。他のゲレンデでは味わえないスキーを楽しめます。スキーが苦手なら、ル・ブレヴァンまでロープウェイで上ってモンブランの山並みの壮大な美しさを見てもらいたいと思います。そこまでしなくても、シャモニーから伸びている山道を散歩して自然に触れるだけでも幸せです」(ダン)