1週間前に出会ったばかりというのに「親友」と呼び合う医者と彫刻家が、彫刻家のアトリエで話をしている。新婚の彫刻家は妻を自慢し、妻と自分の関係を医者に語る。その話を聞きながら、医者が時々さしはさむ忠告は、彫刻家の心理分析に及び、彫刻家の心を乱していく。この医者はいったい誰なのか? 単なる友人と呼ぶには、その言動に腑に落ちないところがありすぎる。 アウグスト・ストリンドベリの『債権者』の一幕目はこのように始まる。第三幕でようやく医者の正体が明らかになる。彫刻家の妻はかつて医者の妻だったのだ! すると医者の行動の理由は? 1)別れた妻に会いたかったから。2)今でも別れた妻を愛しているから。3)愛しんで一人前の女に育てあげた若妻への「貸し」を取り戻すため。ランベール・ウィルソンが、妻への愛憎に苦悶した挙句、復讐という自己の目的を達成しようとする医者役を繊細にみごとに演ずる。妻役のエマニュエル・ドヴォスは、彼女の持分である少女&熟女の魅力を発揮するが、今回はウィルソンの影に隠れてしまった感がある。妻への溺愛に悩む彫刻家役のジャン=ピエール・ロリも健闘しているけれど、ウィルソンの存在感のある演技を引き立てているだけ。ウィルソンが大好き! な私のような観客にはたまらない舞台だ。演出はエレーヌ・ヴァンソン。(海) |
火-土/21h、土マチネ/16h、日/15h。 |
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D A N C E ●Raimund HOGUE “Swan Lake, 4 Acts” 前作「春の祭典」では、舞台上に対称的な、自身の年月を経た身体とエネルギー溢れるような若者の身体とが、この曲の神聖さと残酷さのなかで共存する、繊細で鮮烈な表現をみせた。この新作では白鳥の湖を選んだ。「あのメロディ、振付、または誰かによっての名演によって、おそらくもっとも一般的にも知られているレパートリーで、だからたとえ見なくとも音楽を聞くだけで、みんなにそれぞれ何かしらのイメージが浮かんでくるでしょう?」と彼は語る。 80年代ピナ・バウシュのヴッパタ−ル舞踊団に文芸演出面で参加後、自身の歴史をベースにした初作以来、個人と集団の記憶、各々の親密な時間、愛情、共に生きて在ること、などを描く。「私の愛への憧れを、私の白鳥の湖にしたかった。愛を夢見るような、ね」(珠) |
11日-22日(13日、17日を除く)/ |