アルゼンチン人演出家アルフレド・アリアスが三島由紀夫の舞台劇『サド侯爵夫人』を演出するとどうなるか?レビューMortaderaやコピの戯作一連はもちろん、クラシックの部類に入るオペラ『カルメン』にもいえることだけれど、アリアスが演出する劇は奇抜、サイケデリック、キッチュな子供っぽさがぐちゃぐちゃと混ざりあい、独特なリズムで展開するのが特徴だといえるだろう。 今回は意外にも原作に忠実。けれどもやっぱり細部に「アリアス風」味付けがうかがえるのが面白い。まず、舞台に登場せずとも、いたるところにその威圧的な存在を感じさせるサド侯爵に関係する6人の女性、侯爵夫人ルネ(アリアス自身)、ルネの母モントルイユ夫人(特筆したいほど適役のミッシェル・エルモン)、ルネの妹アンヌ、シミアーヌ男爵夫人、サン・フォン伯爵夫人は、男性、しかもルネの母以外はすべて南米出身の俳優によって演じられる。次に、ルネは、サド侯爵に操られる人形であることを暗示するためか、人形浄瑠璃もどきの面を被って登場する。さらに、劇中では肉欲の象徴であるサン・フォン伯爵夫人は、ボクシング姿で肌を露わにしながらその長いモノローグを朗誦し、時おりバックに流れる音楽は、やっぱり少しラテン風ときている。 渋澤龍彦の『サド侯爵の生涯』を読んで、三島由紀夫は侯爵夫人の謎めいた運命にドラマを感じ、アリアスは三島が描いたこの西洋女性像と彼女をとりまく「閉じ込められた女性社会」に興味を抱いた。結局自分は夫の創造物に過ぎないのだ、と悟ったルネが、手のひらを返すように侯爵への愛を憎悪に変える瞬間は、まさに浄瑠璃を意識した演出で見もの。(海) |
4月10日まで。火~土/20h30、 日/15h 11.5e~25e Theatre National de Chaillot : 1 place du Trocadero 16e 01.5365.3000 |
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Dance | |
●Sidi Larbi Cherkaoui “Foi” 昨年公演され大好評だった作品の再演。男女混声のアカペラと、リュートなど古楽器の生演奏を背景に、世界各地からの、全員が異なる民俗文化的背景を持ち「グローバルな」現代を生きるダンサーたちが集う。 彼らは、人として普遍な生存への本能、各々の信条や信念、創造性を伝えることを旗印に、互いに、時に個々の記憶に基づいた所作に身体を任せる。そこに映像、もの、行為として「いま現在、現実」が立ち現れ、暗喩の幾重にも折り重なった調べは奏でられる。澄み切った肉声の響きに映し出される刹那な現在、そのズレは、繊細な感覚ですくいあげられ、たくましく創りあげられた。(珠) |
21日~29日(25日は休演)/20h30 |
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