現在、個展『A Table!』*が開催中のイラストレーター、島本美知子さんを訪れた。島本さんといえば、『わたし、お料理大好き』(文化出版)、『パリ・日々 の味—ワインとチーズと・・・etc』(マガジンハウス)などの著書、フランス版〈エル〉、〈マリ・クレール〉、〈マダム・フィガロ〉各誌に掲載されるイラストで有名だ。 『A Table!』は、日本料理の世界をパステル画とレシピ、和食の歴史などで綴った、構想・推敲10年、英・仏・日本語で出版予定の本のプロジェクト。その原画約50点が出版に先駆けて公開されている。 雑誌〈アンアン〉創刊と同時に編集部に入り、同誌特派員としてパリへ渡った島本さん、日本に戻りスタイリスト時代を経て再びパリへ。モードを学んだ後、30歳でイラストレーターとして活動を開始した。「人との接触が少なく、自分と向き合い続ける仕事。目の前の仕事をこなすだけでなく常に新しいものを創り出し提案しないといけない。日々、自分との闘いです」。3年前から取り組んでいるアニメーションの短編映画も進めたい。 大江健三郎一家のある夏の出来事を描いた映画『静かな生活』(伊丹十三監督)のなかで、島本さんの絵は重要な役を演じている。主人公の大江家の次女が、閑静な住宅街にある家の窓際で日々の出来事を絵にする。その絵が登場人物のセリフよりも多くを語る島本さんの作品だ。 島本さんの仕事場兼住まいは、大きな街路樹の並ぶ大通りにある建物の最上階。東・南・西に向いた眺めのいい窓があり、涼しい風が駆け抜ける。生活の情景を切り取って絵にする人にふさわしい、美しい生活環境が整えられていた・・・。厳しいと言われようが、やはりイラストレーターは憧れの職業なのだ。(美)
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*『A Table!』 ~7/31日、9/2日~27日 |