麻紀さんは、ジャズのサックスプレーヤー。パリで演奏した経験が忘れられなくて、昨年パリに戻ってきた。今は、9区の音楽院に通いながら、さらに素晴らしい演奏を目指している学生でもある。移民が多い20区の下町にある彼女のワンルームのアパートを訪ねてみた。階段の踊り場や廊下にも窓がたくさん切ってあって、明るいなあ、というのが第一印象だ。 「安くて音が出せるならどこでもいい、という心づもりで探していたら、日本人の知人がここの大家さんを紹介してくれました。管理費込みで480ユーロという条件だったけれど、交渉して442ユーロに値下げしてもらったんですよ!」。ソファーベッドの脇には、和音や曲の分析などに必要だというピアノまで置いてある。 「大家さんの面倒見がよくて、上の階から水漏れがあったりすると、すぐに飛んできてくれる。それでいながらうるさくないので助かっています」。水漏れがあったという台所の壁はペイントがはがれかかっているが、もうすぐ、大家さんが工事に来てくれるとのこと。その台所は、広くはないけれど、調理台もタイル張りだし、流しもかなり大きいし、使い勝手が良さそうだ。 その調理台には、ちょっとしなびたセロリや、熟しすぎのナシ…「最近、歯の治療を受けたり、コンサート代などで家計がピンチだから、アリーグル広場の朝市が終わるころに出かけて野菜や果物を拾っています。トマトソースやラタトゥイユは、みんな拾いものの野菜で作っているんですよ」 「家賃が家賃だからしょうがないけれど、欠点はおトイレが狭いこと。なぜか落ち着かないし、時々洗面台に頭をぶつけたりしてしまう。うれしいのは階段下のスペースを利用して作られた2m2ほどのクローゼット。とにかくみんな片づいてしまう!」 商店も多いし、安いレストランも並んでいるし、毎日のように通っているプールや週末に立つモントルイユののみの市もすぐそこだし、という地の利もありがたい。「7月にはぜひ契約を更新できたらなあと思っています!」(真) |
市場で拾い集めてきた野菜や果物。 どこへ行くのにも自転車。 |
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広場に立つ朝市。 | |
麻紀さんの住んでいるアヴロン通りからペール・ラシェーズ墓地まで抜けていく通りがrue de la Reunion。その真ん中あたりにラ・レユニオン広場(place de la Reunion)があり、木曜と日曜に朝市が立つ。下町の雰囲気に溢れる市場で、品物も安い。ここにもglaneuse(収穫後や市場が終わった後、取り残されたり、捨てられたりしたものを拾う人のこと)の麻紀さんは、ふところがピンチになると出没する。買い物の後は、周りにあるカフェで一杯。おなかが空いた人は、520号で紹介されていたギリシャレストラン(4 rue de la Reunion 20e)に行くのもいい。 〈Le 20e Art〉は、この界隈の若者たちが集まるカフェ・レストラン。店の前が小さな広場になっていて、天気がいいときは外で食事ができる。店内の壁では小さな展覧会。週末にはジャズやフォークなどのコンサートも催される。(真) |
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