ひとつの傑作が出来上がるまで。 “Jeux de Scène”

 バカンス前に宿題として渡された台本を持って、日焼けした女優が稽古場に現れる。待ち受けていた劇作家兼演出家は「さあ稽古を」と女優を急かす。ところが、女優は演出家をじらすかのように悠々とバカンスでの出来事、自分の恋愛話を語って聞かせるが、彼女は内心とてもあせっている。それは稽古の初日になっても、もらった台本がいまひとつ理解できないからだ…。
 「一緒に仕事ができるなんて嬉しいわ、あなた相変わらず若くて綺麗!」が「電話の声は若いけれど、実際見るとあんた幻滅もいいところだわ」に、そして「さすが素晴らしい脚本! 心が震えちゃった!」が「難解な戯作を書いては悦に入るインテリ作家め!」にと、出だしの相手への情熱と賞賛は終いには本音が出て、嫌悪と罵倒に変わる。作家ヴィクトル・アイムは、辛辣で惨酷な言葉や言い回しを巧みに用いながら、作品を共同で作りあげる以前に、自分の臓腑までをぶちまけないと、相手との信頼関係が築けないとでも言いたげだ。理性を失い殺気立った二人の女の言葉の応酬は続き舞台は揺れる。そして決別、舞台はキャンセルに?ここが人間の面白いところであり、憎めないところゆえに、この舞台がどんな傑作? に仕上がったかは誰も知るすべがない。
 今年のモリエール賞5部門にノミネートされているだけあって、役者(D・ルブランとF・ベルジェ)、脚本、演出(M・ブリュワル)などバランス良くできている。息切れがする最後の20分さえなければ、今年の最優秀戯曲賞をもらっても不思議じゃない作品だと思う。(海)


* Theatre Pepiniere Opera :
7 rue Louis le Grand 2e 01.4261.4416
火-土/21h 土マチネ18h 10~38€
● “Ah, vous voila, Dumas!?”
 劇作家になるという望みは果たしたものの、26歳の若さでコメディー・フランセーズに入ったアレクサンドル・デュマの苦労は並大抵ではなかった。台詞を好きに変えたがる役者たちと役者のいいなりになるプロンプター、頭の固い支配人と舞台をちっとも盛り上げてくれない拍手屋…良いスタッフに恵まれなくても、才気溢れるデュマは15年間創作に励む。
 時代は変わっても、皆が憧れる演劇の殿堂の舞台裏はあまり変わっていないらしい。自己の演劇人生を振り返りながらデュマが記したSouvenirs dramatiquesを読んで、コメディー・フランセーズの専属役者(この舞台で出演も)アラン・プラロンは舞台化&演出を決意した。ちょっぴり皮肉もあったりして、影絵やスクリーン効果で七変化する舞台美術が、デュマの回想を軽やかに、そして鮮やかに引き立てることに成功している。(海)
*Comedie Francaise Studio-Theatre :
99 rue de Rivoli 1er 01.4458.9858 
5/18日まで(水-日/18h30、5/1日は休演)
7.50~13€

Dance
●Catherine Diverres
Vortes / San (lointain) a Oscar Schlemmer
 《Voltes》は過去の作品からの短いソロ7作品で綴られる。その中にはBernardo Montetと共に、83年に日本での大野一雄との出会い後に創った《Instance》、美術家Anish Kapoorとのコラボレーションから生まれた《L’ombre du ciel》、彼女自身が舞台に立つ《Stance II》…。
 一方《San》は、ドイツ20年代アートムーヴメントのバウハウスで、空間と身体運動をテーマに抽象表現を絵画・彫刻・舞踊で試みたO・Schlemmerへのオマージュ。その基本の、空間への思想を、表面的にではなく彼女なりに、ダンサーの動き、その内面の欲求をひたすら追い求める。動きは束の間にはかなく消えていくものであるからこそ純粋に美しい。(珠)

27日、28日/20h30 11€/15€/22€
*Theatre de la Ville :
2 place du Chatelet 4e 01.4274.2277