超エリートの猛進から破滅まで。

 丸顔ながらしぶとい感じの”J2M”こと ジャン=マリ・メシエ氏 (45)。
 86年、30歳で当時のバラデュール経済相顧問として国有企業の民営化に携わり、94年、37歳で仏大手水道会社Compagnie générale des Eaux (96年にVivendiと改名)の社長になったのをスタートに、超スピードで通信 (英テレコム)、メディア(Havas出版、Canal+、英・伊衛星TV局)などとの合併、買収を重ね、さらに華やかな世界へと、一昨年、ユニバーサルの映画・音楽部門や米TV網、USA Networksも買収し、世界第2位のメディア帝国を築く。
 ついに複合メディアグループ、ビバンディ・ユニバーサル社長として昨年9月から、N.Y.はセントラル・パーク近くにビバンディが1500万ユーロで購入した520m2のデュプレックス・マンションで、家族とともに憧れのアメリカン・ウエイ・オブ・ライフを満喫。今年1月下旬発行のパリ・マッチ誌には、セントラル・パークでの彼のアイス・スケート姿の写真や、ソフィー・マルソーとの関係ウンヌンを否定することまで怠らないメシエ氏。
 この露出オーバー趣味に、仏側役員たちは苦りきり、米側株主らもこの即成フレンチ・キャピタリストの突っ走りを警戒しはじめる。昨年暮れ頃から母屋の財政にヒビが入りはじめ、01年度の136億ユーロの損失に加え負債額は340億ユーロ に。またリベラシオン紙によれば、過剰投資額から保有株の評価損を差し引くと、02年度の損失額は350億ユーロとみられる。そしてビバンディ株の急降下も前代未聞で、2000年3月に150ユーロ だったのが今年1月以来6カ月間で65%崩落、6月24日には18.75ユーロにまで下落。さらにルモンド紙によれば、昨年11月に英国の衛星テレビ会社の約4億株をビバンディが売却した際、15億ユーロの欠損隠しのためか、01年度会計に記載しなかったなど、”粉飾決算”疑惑が次々に浮上。同日のビバンディ株は前日終値比35%安の17.80ユーロにまで惨落、取引停止とまでなっている。
 米側役員からのメシエ氏解職の要求が強まるなかで、6月下旬以来、仏側役員たちが彼に辞任を迫り、孤立無援となったメシエ氏はついに7月3日、条件付きの退任に応じた。つまり退職金として最初に申し出た、2年間の給与分1200万ユーロではなく2000万ドルを要求しているという。さらに同氏に対し刑事訴追しないこと。あと1年間N.Y.の住居の使用など。転んでもタダでは起きない、グローバル時代の仏産超エリートの猛進、企業破滅のストーリーだ。
 が、それはメシエ氏ひとりの運命ではないのだ。彼が、株という砂の上に築いたシャトーには70カ国にわたり約38万人の社員、数十万人の一般株主もいるのだ。
 廃墟と化したメディア帝国を補強するか解体するか。7月3日、経営陣は、ビバンディの将来を、大手製薬会社アベンティス(元ローヌ・プーランク) の元社長フルトゥ氏に託すことに決定。新社長がはたしてビバンディを救えるかどうか、今後のなりゆきに注目したい。(君)



ビバンディが買収した企業例
325億€ ユニバーサル
253億€ Seagram (英系携帯電話)
220億€ Hughton Mifflin
      (米大手教科書出版)
105億€ USA Network (衛星TV/映画)
*Liberation (02-7-2/4)