パリに暮らす映画ファンの喜びは「フランス映画がたくさん見られる!」ということ。でもその他に、小さな名画座で過去の名作に酔う、というのも見逃せない大いなる楽しみであります。 『The shop around the corner 街角』はエルンスト・ルビッチ監督の1940年の作品。クリスマス前のブダペスト、小さな雑貨店の販売主任クラリック(ジェームズ・スチュアート)は、私書箱を使って文通をしている、逢ったことのない女性にひそかな思いを寄せる日々。ある日、クララという女性がやってきて、この店で働き始める。ふたりはどうもいがみあってしまうのだが、ある日、クラリックは彼女が自分の文通相手だと気付き…。 後にヒッチコックの映画に欠かせない俳優となるジェームズ・スチュアートはまだとても若いが、胸元からペンを取り出すしぐさなどなかなかのもの。自分が文通相手だと告白できないまま待ち合わせ場所から帰ってしまったり、彼女にわざと意地悪を言ってしまうような彼のなんともかわいらしい(ちょっとなつかしい?)気持ち、クララのまっすぐで勝気な女の子の可憐さ、クラリックを励ます友だちの優しさ、など素直でシンプルな登場人物たちの感情がじつに瑞々しい。 雑貨店での日常風景を通し、お互い思いを寄せ合っていることに気がつかないままのふたりのすれ違いが、ウイットに富んだ会話に彩られながら描かれる2時間弱は、まさに至福の時。 「映画に必要な要素って?」と考え直したいシネフィルは、近ごろの映画にはない明快さに驚き感心するだろうし、また「恋愛映画が見たい!」「幸せな気分になりたい!」という方、その他すべての人にとにかくおすすめの名作。(木) |
*Action Christine Odeon |