生物テロ、炭疽菌のあとは?

 タリバーン勢力を標的にした米軍のアフガン攻撃の一方で、アメリカ市民を襲っている炭疽菌郵送テロ。炭疽菌パニックはフランスにも上陸し、その発症に備えて10月17日だけで75000箱(常時1日5000程)の抗生物質Cifloxの注文が殺到。そして白い粉のいたずらやいやがらせ郵便物は1週間で約千件(パリだけで約百件)にのぼり、ある町の助役補佐(54)までがふざけて小麦粉入りの封筒を5人の友人に郵送。10月18日バイヨンヌ軽罪裁判所はこの行為を計画的暴力犯罪とし、被告にいましめの懲役刑3カ月(執行猶予2カ月半)と、郵便局への損害賠償金20 000F、及び国へ59 641Fを支払うよう命じている。
 90年代にアルジェリア系イスラム過激派による爆弾テロの経験をもつフランスだが、NYの惨劇で見るように乗っ取り機がいつ原発に突っ込むか、炭疽菌や痘瘡、ペスト菌などの生物兵器がテロに使われるかもしれない脅威を前にし、クシュネール仏厚生相は10月5日、NBC(核・生物・化学兵器)対策の一環で2年前から存在するBiotox 計画の実施を発表。
 米国は現在直面している炭疽菌対策として、ドイツの抗生物質製造会社 Bayer社に2億箱(!)を注文。この膨大な数字を裏付けるものは93年の米専門家による報告書で、もし100kgの炭疽菌をワシントン上空に撒いたら、その威力は水素爆弾に相当し死亡者13万~300万人と推定。
 炭疽菌に対し仏薬剤安全衛生局は100万人分の抗性物質を、痘瘡ワクチンは500万人分の在庫を保有。厚生省はさらに300万人分の同ワクチンを独仏系Aventis -Pasteur社に注文したと発表。痘瘡は1980年にWHOが絶滅宣言したが、6000万人に予防接種した場合、それによる死亡率は約350人とみられていることから厚生相は、痘瘡感染者が数千人に至らないかぎり一斉予防摂取はさける方針だ。
 また、原発やラ・アーグ核燃料再処理工場、原子力潜水艦基地などへの”カミカゼ “式テロへの対応策として、仏国防省は対空ミサイル砲兵中隊をこれらの近距離に配備した。なかでも、常時55トンのプルトニウムと7500トンの放射性廃棄物が蓄積されているラ・アーグ核燃料再処理工場に乗っ取り機が落ちた場合、チェルノブイリ事故の67倍(!)の放射能が放出されるという。
 危険度の高い化学工場や原発などへの乗っ取り機自爆テロへの対策となると専門家も途方にくれる。それらの防護壁の厚さを2倍にしてもジャンボ機には抗しきれず、または”石棺式”に施設を地下に移すか…テクノロジーも役立たずの現状だ。
 炭疽・ペスト・痘瘡菌他の生物兵器は1972~91年に旧ソ連で大量生産され、今日ロシアはそれを処分する予算もなく  約4万トンが堆積しているという。その研究と生産に携わったかなりの旧ソ専門家がイラクやイラン、北朝鮮などに招かれている。ソ連崩壊後、生物兵器にも国境がないにひとしく、これらの国からビンラディンのテロ組織アルカイダの手にわたっているとみる専門家が多い。21世紀の脅威が露出しているといえる。(君) 


生物テロに対するフランスの特別予算

10億F 炭疽菌への抗生物質
4億F 関係職員・設備拡充
6千万F 痘瘡ワクチン 300万人分
4千万F 防毒マスク 2000個
(Libération : 01/10/20)