最近コートダジュールのマイカー族を怖がらせているのは、赤信号や高速出口での2人乗りバイクによる強奪犯罪だという(今年に入ってニースだけで920件)。
1人がドアを開けもう1人が座席やひざの上にあるバッグを奪うという手口で、被害者の5割以上が外国人旅行者だ。
パリはパリで外国人観光客を狙うスリが急増。2000年度の仏国内観光客数7500万人のうちパリだけで1000万人、そのうち98万人は日本人で観光名所やブチック街を訪れている。日本人客の多くが多額の日本円を持ち歩いているから、ロワシー空港、観光街、地下鉄などでいちばんスリ・ひったくりに狙われるのが日本人、次がアメリカ人だそう。
地下鉄のスリはべつに新しい現象ではないが、昨年パリ市内で届けられた約3万件の軽犯罪のうち3分の2を占めている。なかでもシャンゼリゼ、ルーブル、シャトレなどが同線上に並ぶ1号線はスリの稼ぎ場といっていい。2、3人がグルになって車両入口やエスカレーター上で前後から客をはさみ、一人がスリをはたらく。レアール地区管轄の警察官によれば(8/1日付 Le Monde紙)、スリの急増は、いままでパーキングメーターを壊し硬貨をかっぱらっていた非行少年らが、最近カード支払い式のものが増えたため収入が減りスリに転向、そしてルーマニアなどから密入国してくる未成年者のあいだにもスリが増えているからだという。
日系旅行代理店が各旅行者に配布するパンフは被害例として、前述の「エスカレーター強盗」や、足元に置くか椅子の背にかけたバッグの「置き引き」、 麻薬やニセ札の摘発を理由に財布から札を抜き取る「ニセ刑事」、小銭などをわざとばらまき注意を引きその間にスル「お騒がせスリ」などをあげている。
大手旅行代理店のK氏は被害者への事後措置を担当し、犯行現場の確認から警察署、大使館への届け出まで面倒をみている。最近とくに目立つのは、パリ環状道路周辺のホテル内とその近辺での盗難だ。あるホテルでは、部屋内取り付けの金庫が破壊され十数万円の盗難が同じ日に2件、部屋内でのスーツケースの破壊が1件。驚くのは客が浴室にいる間に部屋に泥棒が入り込んだケース。20区はずれの大きなホテルでは玄関先での数人の暴漢によるひったくりが日常化しているという。
昨年大使館に届けられたパスポートの盗難は720件(前年比+27%)だが、現金やカメラなどの盗難は数えきれないはず。もはや花の都などといってられない状況のなかで昨年暮、日本大使館と主要日系旅行代理店は「安全対策協議会」を設け、パリ市長と警視総監、犯罪の多い区の区長に嘆願書を出している。
外国人旅行者のなかでいちばん気前のいい日本人客が、湾岸戦争時にテロを避けパリを迂回したように、スリの街パリを避けるようになったら、また不景気に見舞われかねないのである。パリの蜜にたかるスリへの対策が急がれる。(君)
パリ・パリ郊外で暴力を伴う窃盗増加
+41% パリ市内
+39% セーヌ・サン・ドニ県
+35% オ・ド・セーヌ県
+15% イヴリーヌ県
*全国の軽犯罪増加率は昨年比+9.58%。
*Le Monde : 2001/8/25)