老女vs若い娘。Une Femme de Lettres他

 イヨネスコ劇での名演や映画『ダニエルばあちゃん』でお馴染みの女優ツィラ・シェルトンが英国人劇作家アラン・ベネットの二つの短かい戯曲に挑戦している。Une Femme de Lettres では、苦情の手紙を書くことを趣味にする老婦人の毎日が綴られ、Un Bi-choco sous le Sofa は、はしごから落ちた老女の際限のない愚痴で構成されている。ふたつの劇に共通するのは、一人暮らしをする老女の毒のきいたおしゃべりとその裏に隠された孤独…。ツィラ・シェルトンは、83歳という年齢を感じさせずに観客を楽しませる。老女たちに同情しながらもその不平だらけの運命を楽しむ茶目っ気のある演技…そして私たちも彼女たちの「老い」を滑稽に思うと同時に、少し哀しくも感じている。-1-
 Le Journal d’ une petite filleは、大戦前のウィーンで12歳の少女が書いた日記の世界をマリオン・ビエリーが演じる。自分の性の発見、異性への興味、母親の 死など感受性の強い思春期の少女が書き綴る日記は、時代も場所も違うとはいえ、忘れていた昔の自分を少し思い出し、懐かしい気分にさせられる。-2-(海)
Le Journal d’ une petite fille

ツィラ・シェルトン

-1-
Theatre Tristan Bernard / 01.4522.0840

-2-
Theatre de Poche Montparnasse/

01.4548.9297


●夏の演劇フェスティバル
 演劇が好きでバカンスをとることができる人は、7、8月はパリを出た方がいい。夏の演劇祭、といえばまずはお馴染みアヴィニョン(7/6-28)。オフにこそ新しい発見がある、というけれど、インのほうも相変わらず豪華。ディディエ・ブザース(モリエール)、ベルナール・ソベル(ジャリ)、ランベール・ウィルソン(ラシーヌ)、グザヴィエ・デュリンジェール(自作劇)、ジャック・ニシェ(コルテス)…など、演出陣と演目を見るだけでも飛んでいきたくなる顔ぶれが揃っている。ピエール・アルディティ、ガランス・クラヴェル、ドニ・ラヴァン、ディディエ・ソンドル、クリステン・スコット=トーマスなど、ミーハ—だと笑われても魅力的な役者陣にも興味をそそられる。問い合わせ:04.9014.1426. 
 今年で50周年を祝うぺリゴール地方サルラのFESTIVAL DES JEUX DU THEATRE(7/18-8/6)は、ジャン=ポール・トリブーがディレクターになって
6年目だ。モリエール、シェークスピアなどの古典からアラン・サックス(演出も)、ダリオ・フォなどの現代劇まで、すべて野外で上演される。
問い合わせ:05.5331.1083
 1960年にジャン・ダネが創設しフランス中の市町村を巡業して回った、伝説の移動劇場LES TRETEAUX DE FRANCEの運営を引き継いだ演出家マルセル・マレシャルが、ロット県にあるフィジャックで演劇祭を開催(7/26-8/4)。規模は決して大きくないけれど、プログラムも同時に繰り広げられるイベントも充実している。問い合わせ:05.6534.0625 
 せっかく近くまで来たのだからフュメル=ボナギュイユ演劇祭(8/5-10)にも寄ってみたい。モリエール、シェークスピアなどの古典が大いに楽しめる。
問い合わせ:05.5371.1717 
● HITCHCOCK ET L’ART
 映画監督アルフレッド・ヒッチコックに影響を与えた芸術とは何だったのか?ポンピドゥセンターで9月24日まで開かれている展覧会でこの疑問を解くことができる。「女性たち」「欲望」「瓜二つ」「不安」「恐怖」「形とリズム」などのヒッチコック作品を通して顕著なテーマに分けられた展示室では、それぞれの作品にインスピレーションを与えただろう芸術作品が紹介されている。ダンテ=ガブリエル・ロセッティのロマンチックな女たち、ウィリアム・ブレーク=リッチモンドの幻想的な世界、オードリー・ビアズレーの空白の多い白黒の世界、ジョルジオ・デ・キリコの人気のない不吉さ、フェルナンド・ノップの謎に満ちた描写などが、ヒッチコック映画のシーンと一緒に並ぶのを見ながら、『サイコ』のおどろおどろしい家は様々な絵や写真から想像をかきたてられた産物なのだと気付かされる。ひとりの映画作家の創作原点が「あっ、そうだったのか」と視覚的にそして心理的に明かされていくのが何とも興味深い。(同センターでヒッチコックの作品を上映中)