教育界と聖職界での小児性愛者による性犯罪は沈黙の中に封じこめられてきた。この事実を象徴するような二つの裁判が同時期(6/14、15)にカーンの軽罪裁判所とヌヴェールの重罪院で開かれた。 教会法(1215年)に基づく”職業上の機密”にフランスでは初めて触れる、ピカン司教(66)裁判は、もともとは90年代に十数人の未成年者を性的虐待したルネ・ビセ神父容疑者の性犯罪に関係する。 96年、被害者の母親が助任司祭に訴え、ピカン司教もその問題に通じていたにもかかわらず警察に告発せず、ビセ神父に精神治療を勧めた後、他の教会に配属させ事件を隠蔽した疑い。98年、同神父は逮捕され、昨年10年の裁判で懲役18年の刑を受けたが上告、年末に再審予定。これまで約2万5千人の聖職者の中で30人に有罪判決が下り、現在19人を取り調べ中。 ピカン司教被告は、ビセ神父に対する裁量を誤ったことを認めながらも、今後も同類の問題が生じても機密を守る姿勢は崩さないと言明する。が、昨年11月、司教会議は、聖職者の未成年者への性的虐待は裁判にかけるべしと決定した。検事は「職業上の機密よりも児童を保護することの方が根本的」と執行猶予付き禁固 6カ月を求刑。9月4日に判決が下る。 もう一つの裁判は、1970年から97年に定年するまでの28年間、フランス中部コーヌ・シュール・ロワール市の元小学校教諭ジャック・カイゼルメルツ容疑者(63)が、15歳未満の児童(8~14歳)総数72人に犯した猥褻・暴行事件。97年1月、28歳* になる彼の教え子ティエリ(警察官) は「”ジャキー”に8歳から暴行された」と警察に告発し数日後に自殺した。その4カ月後に同容疑者は逮捕され勾留18カ月後、98年に仮釈放された。被告は、裁判前日(6/11) に管轄の警察に出頭せず逃亡、翌日逮捕され6月15日に出廷した。 お仕置きに生徒を四つ這いで教室を回らせ尻を叩く怖いセンセイ、ジャキーは、教室内や自宅で、または生徒を釣りに連れて行き、猥褻行為を強い暴行。76年に数人の被害者の母親たちから知らされた校長は視学官に報告したが、97年まで戒告もなく、ジャキーは信望の厚い教師、 2児の父親の仮面を被り小ひつじを狙うオオカミと化していた。羞恥心と恐怖心から沈黙を守ってきた小ひつじたちは今日30~40代になり証人席に立つ。被告席で打ちひしがれるジャキーは「アル中の巡査だった父親に幼年期からベッドに連れ込まれ12歳まで性的虐待を受けた」と幼少期の悪夢を告白。6月23日、検事は被告に禁固刑20年を求刑、陪審員は18年とし30年間の性犯罪に終止符を打った。 97年発布のセゴレーヌ・ロワイヤル通達は、教職員の性的暴力が発覚した場合、同僚による即時告発を義務づけている。 3月にはコルメイユ市の小学校教諭の猥褻罪容疑で生徒260人が聴取され、4月には小児性愛者として訴えられたアルザスの教諭が自殺している。”沈黙の掟” を破ることを強いられている聖職界と教育界でペドフィル狩りが広まりそう。(君) *未成年期に性犯罪の対象となった被害者は、 |
未成年者(-15歳)への性犯罪増加(’99) 13 500件 性犯罪推定数 492件 強姦(’97 : 371件) |