役者たちがイキイキしている。 “Carrement l’ouest”

 ジャック・ドワイヨン監督の新作『Carrement a l’ouest』が元気が良くて面白い。この題、直訳すると『まっすぐ西へ』ってことになるが、フランス人に聞いたら、”西” には、ちょっと頭がおかしくなるっていうか、気がふれるっていうか、そういう意味があるという。

 フレッド(ルー・ドワイヨン)の大学生の恋人が、チンピラから借金の返済を迫られる。フレッドはこのチンピラ、アレックス(ギヨーム・ソウレル)に惹かれて彼を追っかける。彼女は、彼の気を引くために、シルヴィア(キャロリーヌ・デュセイ)というナイト・クラブで知り合った娘とアレックスを敢えて結びつけようと画策する…というのが話の筋だ。
 ”jeu de seduction”(相手を魅惑する駆け引き)は、フランス人の人生の中で大きな位置を占めているようだ。その技巧を戯曲にしたマリヴォー(1688-1762)は2世紀を経た今も人気がありマリヴォダージュ(マリヴォー風の)なんて言葉もあるくらいだ。恋愛ゲームにいそしむのは、大して重要なことではないなんて考えている人は、『Carrement a l’ouest』の物語にはうんざりだろう。しかも、ドワイヨン作品らしく、みんなよく喋る。パチンコのチューリップ開きっ放しみたいに騒々しい。

 しかし、物語を抜きにしてもこの映画は面白い。何故? まず役者達がびっくりするくらいイキイキしている。特に、これが初の演技経験というギヨーム・ソウレルが、ごくナチュラルにぶっ飛んでる。ドワイヨンは、役者の魅力を引き出す術に長けている。年齢と逆行して彼の視線はどんどん若者へ向く。そして、この役者達の目まぐるしい動きを、同じだけヴィヴィッドに捉えるキャロリーヌ・シャンプティエのカメラも凄いのだ。(吉)