1月22日に始まったエルフ疑惑裁判で、デュマ元外相が元愛人クリスチーヌ・ドヴィエ=ジョンクールを当時国営のエルフ・アキテーヌ石油会社に雇わせ、エルフ社からの資金で1800万Fの高級アパートを彼女が購入、26万Fのギリシャ彫像や1万Fの彼の特注靴も彼女がエルフ社用カードで支払ったとか。彼女はエルフの元総務部長アルフレッド・シルヴァンに重宝がられ、90年断交状態にあった台湾へのトムソン製フリゲート艦輸出問題で禁輸解除を得るために、デュマ元外相を口説くように頼まれ、8000万Fのコミッションを約束される。実際には彼女は4900万Fを得、架空給与も合わせると約6000万F をスイスの口座に入金していた。 元恋仲のデュマとクリスチーヌ、彼女の一時的恋人ミアラ(1300万Fの収賄)、シルヴァンの裏金操作は知らなかったというルフロック元エルフ社長らは「すべて逃亡中のシルヴァンがやったこと」と、約30億Fを横領し15億Fを自分の懐に入れたとみられるシルヴァンを盾に世話物風法廷劇を演じてみせていた。 2月7日そこに現れたのが当のシルヴァン被告(74)。彼は3年間の逃亡生活の最後の18カ月はマニラ周辺で隠れ家を買い替えながら、彼の元家政婦、現在愛人のフィリピン女性メディナさんと優雅な潜伏生活を送っていた。昨年以来捜査網が張られついに2月2日に逮捕、フランクフルト経由でパリに移送、収監された。 シルヴァンの経歴も一筋縄ではいかない。1952年朝鮮戦争で仏軍隊にいた時、東京の富士銀行千住支店でのピストル強盗未遂で捕まり2年の懲役刑。帰国後モービル石油、ムリネックス社を経てエルフ社に入る。ルフロック元エルフ社長とはモービル石油時代に知り合い、同氏の結婚保証人を務め2年後の離婚時にはファティマ・ルフロック夫人にエルフから1800万Fの慰謝料を払わせ公私混同。 石油開発・買収には常套手段といわれる賄賂戦略をシルヴァンが牛耳っていた。彼は、旧東独のルナ製油所とガソリンスタンド・チェーンの買収時にコール前首相の側近に約3億Fのリベートをつかませ、キリスト教民主同盟(CDU)の裏資金疑惑を誘発。アフリカの石油開発事業でも現地・仏両サイドの仲介者に巨額の賄賂と架空給与がばらまかれていた。それにあやかった政財界人は故ミッテラン、パスクワ元内相関係を含め約160人。上記のクリスチーヌもその一人で、彼女はその経緯とデュマ氏とのかつての関係を堂々と自叙伝「仏共和国の娼婦」(*No.435: 99/4/15号) に綴り、開き直っている。 3月12日に再開する裁判でシルヴァン被告は負けてもともと。腹いせに、金をつかませたけど気にくわないヤツらの名を暴露し世間を騒がせようなんて、弁護作戦を練っているのかも。(君) |
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