ソムリエの吉岡慶篤 (のりあつ) さんがワインの産地を訪れて、その場の雰囲気を肌で感じるためにフランスにやってきて半年。昨年の11月より語学学校で知り合った友人とシェアしているのがこのアパルトマン。日系書店の掲示板でこの物件を知り、幸運なことに一番乗りで大家さんと連絡をつけることに成功。それぞれ個室を持てることと、友人はバスタブ、彼は洗濯機つきが条件だった。ここはそれを満たしているうえに、料理好きの吉岡さんを喜ばせるオーブンや、4口ガスコンロ、加えて中央暖房など設備が整っていたので即決。彼の部屋は、隣に比べて部屋もベッドも小さいのだが、薄いブルーに塗られた壁の色が気に入っていたので、それぞれが自分の部屋を選ぶのもすんなり決まったのだとか。 旧建築で天井が高く、ほとんどのドアが焦げ茶色に統一されておりシックな印象を受ける。収納スペースも充分にあるし、広いバスルームも快適そうだ。この広さを利用して前の住人は30名以上のフェットを催したというのだから羨ましい。 友人とはいえ、男の子2人で暮らす苦労もあるのでは?と聞くと「食料品の管理はきっちりしたほうがいいかも。僕たちは和食とフレンチのように食の好みも分かれているので特に問題ないし、あとは妥協するところはするというのが共同生活のコツかな」 窓際にさりげなく置かれているボディーには彼のお気に入りのコートが掛けられていてちょっとしたオブジェのよう。前の住人が置いていったものを彼流に活用したものだ。これだと必要な時にひょいと羽織れてなかなか便利とは彼の弁。 この部屋では、ワイン好きが集まってしばしばワインの試飲が行われているそうだ。試飲会といっても、堅苦しいものではなく、吉岡さんが選んだワインを質疑応答を交えながら楽しく飲んでいくというもの。興味がある人は、彼のメールアドレスnori@kta.att.ne.jpまで。(里) |
窓からは北駅の広い眺め。さすがはソムリエ。
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常設市場を訪れよう。 北駅と東駅の間に位置し、交通の便が抜群の吉岡さんのアパルトマンを出て東駅のほうに向かうと、ちょっとノスタルジックな建物が見えてくる。常設のサンカンタン市場だ。ここでは、肉や魚、野菜だけでなく、惣菜や乾物を扱う店、昔ながらのパン屋に花屋、靴の修理屋に金物屋、そして買い物の休憩に立ち寄るカフェという具合に、あらゆる商店が軒を連ねている。店と店の間には、5フランで動く子供用の乗り物まであって何だかホッとする懐かしさのある空間だ。 ここにもワイン屋はあるのだが、市場の向い、”8 Mai 1945″ 通りと “Fbg St-Denis” 通りの角に位置する食料品店が吉岡さんのおすすめ。外観は、店名を示す看板もなく不思議な雰囲気だが、年代物の品揃えが豊富だ。実はここで、吉岡さんはブルゴーニュの珍しい産地のワインを見つけ、不作の年とはいえそれでも充分に高級な86年を購入したところ、店員が間違って手渡してくれたのは当たり年の89年。価格差もさることながら、まず手に入ることがない稀少価値のある1品を思いがけず得た経験がある。そんなことは度々ないにせよ、日本では30倍の価格というティタンジェのコレクションボトルのシャンパン (650F) など通には見逃せない店だ。 *Marche St-Quintin : 85bis bd de Magenta 10e 火~土:8h-13h/15h30-19h30 日:8h-13h 月休 |