体験レポート:貧乏学生アレックスくん、ロンシャン競馬に初挑戦
6月25日(日)曇り
今日は生まれて初めて競馬場(1)に出かけてみた。それもエレガントと噂のロンシャンAだ。入り口付近では無料のレース表が手に入る。僕は新聞売り(2)のおじさんと目が合ったので競馬新聞(3)も購入してみた。まずは競馬初心者に優しいスタンド「Jouer pour la première
fois」(初めて賭ける)へ直行。ここは賭け方の基礎がビデオや紙資料で判るのだ。同じ建物にあるインフォメーションセンターには両替所や公衆電話がある。曇ったショーウインドウの中には、エルメスもどきのスカーフなどロンシャングッズが陳列されている。趣味はあまりよろしくないが、商売っ気がなく逆に好感が持てる。
さてスタジアムに足を踏み入れてみる。シーズン中の日曜だというのに入場者数(4)はわりに少なく、空席が目立つ。左斜め前方にはツタがからまるピンク色の可愛らしい風車小屋が見える。緑豊かな風景が心を和ませる。さて早速馬券(5)を買ってみよう。まずは運試しに自分の好きな数字3、5、10を適当に並べて、3連勝賭けにチャレンジだ。***時間通りに出走馬が出発した。…うーん残念。ま、こんなものか。ちょうど15時からは無料見学ツアー(6)があるので参加することにした。普段一般の人には開放されない場所を、馬博士の美人ガイドさんが丁寧に案内してくれるのだ。まずは検量室から。ガラス窓を通して騎手用の体重計が見える。ここで騎手は試合前と後に体重を測量する。試合前後での体重差が400g以内でないといけないのだ。また対戦する他の選手より重さが軽ければ、鞍の下に鉛を入れ釣り合いをとるという。とても厳密だから、騎手はうかつに水をがぶ飲みもできない。それから馬小屋前に場所を移す。馬たちを間近で眺めつつ、話に耳を傾ける。例えば馬は各自、出生やワクチン接種の有無を記載した証明書を持っていること。ドーピング検査に一度ひっかかったら、2度目は公正さを配慮し海外で検査を受けること。レース直前にまちがって子供が馬にチョコレートでも与えてしまったならば、カフェインのせいで検査にひっかかる可能性があること。レース直後の馬は神経が高ぶっているから、シャワーの後競馬場の雰囲気を忘れさせるため口笛をふいてやること。その後馬がおしっこをしてくれればリラックスした証拠だとか。デリケートな動物なのだ。***
さて僕もかなりの馬通になったので、再度競馬に挑戦することに。先ほど購入した新聞を広げ研究開始だ。VICTORY BOBやDIAMOND GIFTなど英語名が目立つ。MUSICPARKとかEAU DE RIZなど意味不明な名前も多い。SLOW DOWNなんかはとんちが効いている。そんな中LOVING SMILEという愛らしい名前を発見。直感がよぎった。僕は100フランを握りしめ馬券売り場に走った。「“ラビングスマイル”お願いします、単賞で。」僕はスタジアムに移り、出走馬たちがスタート位置までギャロップする姿を固唾をのみ見守った。どうぞ僕に勝利のラビングスマイルを与えてくれますように。とその時、場内がにわかにどよめきたった。Hein?ふと見ると、騎手を振り落とし疾走してしまった慌て者の馬がいるではないか。客の笑い声が高まっていく。お間抜けな馬だなあ、あれ1番?なんだ僕のラビングスマイルじゃないか。この失態劇でこのレースの勝敗は決まったようなもの。ラビングスマイルの騎手は特別輸送車にてレース開始ぎりぎりにスタート位置に辿り着き、一応レースに参加はしたものの、動揺は隠しきれず最下位に終わった。これで僕の競馬デビューは花と散ったのだった。その後新聞で、ラビングスマイルも今日がデビュー戦だったことを知った。
(瑞)
競馬初心者情報
《ロンシャン競馬場》
HIPPODROME DE LONGCHAMP
Route des Tribunes 75016 Paris Tel 01 4430 7500
メトロ Porte d’Auteuil,B4,5出口よりバス241番に乗り換えてHippodrome de Longchamp停留所下車。駐車場完備、パリ在住の方には自転車もお勧め。
日・祝、パリ大賞(6月最終日曜)・凱旋門賞開催日(10月第1日曜)には、Porte d’Auteuilから無料送迎バスが出る。開催シーズンは4月(今年は3月30日)から6月と、9月から10月。
入場料平日3€、土日4€、大賞日8€、学生&シニア半額、18才以下無料。
無料託児所完備、レース日の日・祝祭日には無料の子供向けポニークラブ(ESPACE PONEYS)有り。《解説》
1/ 競馬場
現在フランス国内に268ケ所。特にここ数年フランスの競馬場に、日本人観光客が目立つようになってきた。日本のレースでフランスの馬が出場する機会が多く、熱狂的なファンが本国フランスまで自分の好きな馬を応援しにくるのだとか。
2/ ロンシャン競馬場
57ヘクタールの広大な面積に、大小あわせ4つのピストを持つロンシャン。ブローニュの森に囲まれた緑豊かな立地が魅力。コースは起伏が少なく平坦。近くにセーヌ川の支流が走っているので、水が溜まりやすく土の状態が柔らかくなりやすいのが欠点。歴史的に王侯貴族たちの社交場だったため、「ロンシャン=エレガント」という方程式が根付く。でも実際は、埼玉の浦和競馬場で見かける客層のフランス版といった輩も多く見受けられる。ここも万国共通の「金欲とロマン」が渦巻く熱い場所なのだ。現在有閑ブルジョワ勢が見られるのはRond de Presentation(パドック:出走馬の状態を見るところ)近くなどに限られる。
3/ 競馬新聞
アレックスくんが購入したのは日刊競馬新聞「Paris-Turf」(7F)。他にもキヨスクでは「Tierce Magazine」「Turf Magazine」(30F)「SATATO Tierce」(29,5F)などが手に入る。インターネットはhttp://www.paris-turf.com
4/ 入場者数
凱旋門賞の入場者数は5万人に膨れ上がるが、普段の入場者数は5千人程度と少なめ。人込みなしでゆったりと楽しめるロンシャンは逆に狙い目のお遊びスポットだ。
5/ 馬券
10Fから勝負に参加できる。競馬場以外でも、全国7200ケ所ある緑の看板が目印の「PMU」(多くはカフェ、タバコ屋に併設)にて馬券が購入できる。気になる掛け金の行方は、「配当金へ…72,4%」「税金へ…16,9%」「PMUへ…5,8%」「競馬団体へ…4,9%」。
6/ 見学ツアー
無料見学ツアーは、日曜日の14時30分、15時30分、16時30分から行われる。集合時間はインフォメーションセンター前。