本格的な夏の到来で、あちらこちらの公園の片隅でペタンクをやっている人たちを見かける機会が多くなった。特に、これからバカンスをプロヴァンス地方で過ごす人は、街の木陰で、夕涼みにペタンクに熱中しているおじさん連中を横目で眺めて過ごすことになるだろう。フランスに住んでいる人なら、今までに一度くらいはペタンクをやってみたいと思ったことがあるに違いない。名前は知っているが実際にやったことがない…ペタンクはそんなスポーツだ。
ペタンクは見るだけじゃつまらない。このさい思い切ってやってみよう。とはいえ、いきなりおじさん連中の仲間入りはちょっと…という人のために簡単なルールの説明や、ゲームの際に知っておきたいペタンク独特のボキャブラリーをまとめてみた。知っているようで今まで知らなかったこと、簡単そうに見えて実は意外に奥が深いスポーツだということがお分かりいただけるはずだ。
ペタンクがオヤジのみに限られたスポーツだと思ったら大間違い。老若男女、誰もが楽しめるスポーツなので、この特集を読んで、この夏、ブリスト (ペタンク・プレーヤー) デビューも悪くない。
文と写真: 益子実穂、田中里絵
・ペタンクの歴史
タマあそびの伝来。今から約2600年前、マルセイユを植民地としていた小アジアのフォカイア人がペタンクの元祖をもたらしたといわれる。でもキーユ(ボーリングの前身)、ポーム球戯、ビー球、その他〈球戯〉の歴史は絡み合っていてペタンクだけの歴史を辿るのは難しい。ラブレーはペタンクに近い “à cochonnet devant” について書いているが、中世は球戯が大流り。大革命までに庶民への禁止令が3回ほど出され、特権階級が球戯を独占したりもした。いよいよ、ペタンク誕生。
1907年、3歩ステップを踏んで投げる「プロヴァンサル球戯」からペタンク誕生。当時はまだ木の球や、ブル・クルテと呼ばれる、木の球の表面にびっしりと釘を打ち込んだ球を使っていた。ペタンクの語源はプロヴァンス語、ped tancos「足を揃えて」の意。あるプロヴァンサル球戯の元チャンピオンは、車椅子生活なのでステップを踏んで投げるゲームに参加できずに退屈していたが、ある日、車椅子から投げてみた。これが面白いと、他の人も円のなかから足を揃えて投球したのが始まり。公式ルールには当然、車椅子ブリストの規定が盛り込まれている。