中国人不法移民58名の窒息死事件。

 6月19日深夜、英国のドーバー港税関史がロッテルダムからのトマトを運ぶ密閉したトラック内に中国人58人(女性4名)の窒息死体と生存者2名を発見した事件で、EU諸国は不法移民のグローバリゼーションの一端を見せつけられたよう。
 60人の中国人を運んだ冷凍トラックは、ロッテルダム東部に登録されているが実際には存在しない運送会社の車で、英国の地元警察はオランダ人運転手を58人の過失致死容疑で、彼の父親と仲間1人、ロンドン在住の中国人 2人を共犯容疑で逮捕した。英国に密入国しようとした中国人のほとんどが中国東南部、福建地方の出身者だ。彼らは欧米自由諸国で一旗揚げようと、世界各地に網を張る密入国手配者に10万~30万フランを支払い、ロシア→東欧諸国→ドイツ→フランス→英国、あるいはかつてのボートピープルのように密出国後、空路と陸伝いに数週間かけてロンドンにたどりつく。EU諸国間の国境を外したシェンゲン協定国フランスやドイツは取り締りが厳しいので密入国者たちは、同協定に加盟していない英国をEUへの裏口とみなしているようだ。
 英国への亡命申請者だけでも99年には71000人(98年 : 46 000人)と毎年倍増。EU大陸から流れ込んでくる不法移民に手を焼く英政府はこの 4月以来、密入国者を運んだ運送業者に1人あたり2万フランの罰金を科している。世界移民機構(IMO)の統計によれば、90年以降、第三世界から欧米に押し寄せる不法移民は年間30万~50万人、中国人だけで10万人にのぼる。

 中国人の多くはいかがわしい旅行代理店や仲介者に、将来への投資と考え巨額の一部を出発前に払い、到着地がパリなら中国人経営の縫製工場やレストランで奴隷に近いヤミ労働につき、一生かかっても払い切れない残金を月々払うヒモ付きの不法滞在者になりかねないのである。
 ドーバーの事件の数日後の6月27日、パリ9区の縫製街サンティエ界隈にある中国系両替所2店が、密入国者たちの月々の返済金を吸収し、大手銀行をとおして本国の口座に振り込んでいたことが発覚、中国人経営者夫婦を含む関係者27人が一斉に検挙された。警察は2日分の入金額530万フランを押収、2700万フランあった口座を凍結。この種のヤミ金はドラッグマネーと同様に銀行をとおして”洗浄”され、巨額資本となって欧米での不動産購入や事業資金にリサイクルされるという。

 先進国のヤミ労働市場と密入国者との需要と供給を利用し同胞の密入国者から金を吸い上げる組織網を、米国の禁酒法時代に法の裏をかいたアル・カポネのマフィア組織にたとえる社会学者もいる。

 EUの城塞を高くすればするほど、南北の貧富の落差により流れ込んでくる密入国者は増えていくだろう、先進資本主義国にヤミ労働力の受け皿があるかぎり…。(君)

全世界で不法移民増加

1億5000万 全世界移民総数
1900万~3800万 全世界不法移民
300万~500万 EU内不法移民 
40万ギリシア 25万イタリア
15万スペイン 9万フランス 
*世界移民機構(IMO)の推定統計。
(Figaro: 6/20, Le Monde: 6/21) *地図 (Courrier international : 7/6 – 12)