超ハイテク時代のマレ・ノワール。 天災か人災か?


  昨年12月12日、ダンケルクからイタリアへ向かう途中のタンカー「エリカ」号が難破した。胴体が二つに折れ、 漏れた重油が沿岸を脅かし続けたこの事故は、生態系の惨劇として、未曾有の暴風と共にフランス世紀末の暗い記憶として留まるだろう。
 重油はついに24日から400キロという広範囲の沿岸を汚染し始めた。ブルターニュ沿岸の重油汚染はこれが初めてではない。67年から主なものだけでも7つある。最悪だった78年のアモコ・カディス号の難破による汚染に比べると少ないものの、汚染範囲は4倍だ。しかも大満潮の周期と重なり、おまけに空前の暴風雨によって西海岸全体に拡散された。
 宇宙船に乗って宇宙大望遠鏡衛星ハッブルを修理にゆく時代に、なぜこうした技術から見ればはるかに原初的に見える難破事故の災害に対する防御技術がないのか、否、なぜ繰り返しこんな信じがたい事故が起こるのか、沿岸保護を実践してきたブルターニュ住民の怒りと悲しみは測りしれないものがある。
 砂浜に漂着した重油はまだしも、岩場に固着した重油はどうしたら除去できるのか。汚染は沿岸ばかりではない。越冬しに北欧からやって来る数万羽の渡り鳥が重油だらけになって大量死している。それを救おうと、野鳥保護連合や環境団体、多くのボランティアによって、汚染された鳥の洗浄と介抱が行われ、元気になった野鳥はオランダへ送られている。
 しかし、もっとも打撃を受けるのは沿岸漁業だ。海老や貝類は言うまでもなく、浅海に生息する魚類も大きな影響を受けるだろう。汚染がなくなるまで数カ月から数年かかる。そのうえ、風評被害が重なる。生ガキは保護されていても疑いをかけられ、仕入れをキャンセルされる。
 また、何度も事故が起こっているのに、いざというときのためのスコップ、バケツさえ準備していない行政側に対する住民の不満も募る。気象庁の予測はずれも対応を混乱させる原因だった。
 だが、この汚染はいったい誰のせいなのか。一番の責任は疑いなく、安全管理の不十分なタンカーで原油を運ばせたトータル・フィナ社だろう。船籍はマルタ島、船員は皆低給・無契約のインド人、海難保険もまともに期待できない。かくして大企業は安い下請けを酷使することによって、大量の利益を得る。そして事故が起これば、自己の免責だけを主張する。どこに犯罪があるかすでに明瞭ではないか。(プチ・ポア)
*重油で汚染された鳥:約18 000羽。
**アモコ・カディス号:22万トンの重油漏れ。
***エリカ号:2万8000トンの重油漏れ。

 

パスワードをお忘れの場合、OVNINAVI.COMに登録したE-mailアドレスにパスワードをお送りします。登録E-mailアドレスを入力してください。


戻る