大口開けて笑えるモリエールはいかが。 L’AVARE


 1668年、モリエールが晩年に書いた喜劇『守銭奴』の主人公、金持ちのアルゴンは猛烈な吝嗇家で、他人は自分から金をかすめとろうとする泥棒で、身内にだって油断はできないから、娘も息子も自分の財産を増やすための道具だと考えている。 自分の執事と恋仲にある実の娘を年寄りの資産家に嫁がせようと企んだり、息子が思いを寄せる女性を、財力にものをいわせて自分の妻にしようとしたり、おまけに自分の婚礼のご馳走には最大の節約をしようとする…実に嫌な奴なのである。 ただ、そんなけちな人間、アルパゴンにばかり都合良く物事が運ぶわけはないのが、世の中というもの…。
 「これはどの時代にもありうる世界共通の物語だ」と、演出家のジェローム・サヴァリが言うとおり、アルパゴンのように「金」を優先するあまり、あらゆる人間の感情を置き去りにしてしまった人たちは現代にもいるだろう。 サヴァリは原作に忠実でありながら、小道具や役者の演技に「今」を取り入れ、現代とモリエールの時代とを重ねあわせる。原作者の本来の目的は、アルパゴンのような人間の持つ残酷さ、哀れさを、喜劇という形で軽くしてはあるが皮肉って描くことだった。 そこにサヴァリが得意とするサーカス的な笑いの要素が取り入れられ、絶頂に達した後半部には、お腹の皮がよじれてしまうほど可笑しな登場人物ひとりひとりのパフォーマンスが、舞台の上で同時に進行していく。
 アルパゴン役のジャック・セレーは、この役を演じるのが積年の夢だったというだけあって、水を得た魚のように生き生きと飛び回り、打算的な女フロジーヌ役を今風に早口でまくしたてながら演じるカトリーヌ・ジャコブと最高のコンビ。 6/20日まで。(海)
*Theatre National de Chaillot :
Place du Trocadero 01.5365.3000
火 – 土 / 20h30 日 /15h 120F /160F
5/6、11日は子供向けにアレンジして公演。


●THEATRE MAGAZINE

 映画専門雑誌は堅いものからくだけた内容のものまで数多くあるのに、演劇専門誌となるとこうはいかない。 「芝居はちょっと敷居が高くて…」と敬遠する友人たちの言葉を反映するかのように、だれもが気軽に読むことのできる情報雑誌がたしかに欠けていたし、劇場などの入口で無料配布される月刊紙 “LA TERRASSE” の内容も悪くはないけれど、二色刷りで大きくてあまり読みやすいとはいえなかった。今春登場した季刊誌 “THEATRE MAGAZINE” には、話題の芝居がわかりやすく紹介され、演劇界の最新ニュースやインタビュー、ルポ記事も、カラー写真をぜいたくに使いながら掲載され、みんなに演劇好きになってもらおうという姿勢があちこちに見られる。カナダで修行を積んで欧州へ戻ってきた編集長のアシュミー・アレーさんは「現場の臨場感を伝えながら、18歳から78歳の人々に愛読される雑誌をつくりたい」とその抱負を語ってくれた。 しっかりね!(海)



●RENAUD – BARRAULT
 1939年に運命の出会いを遂げたふたりの男女、マドレーヌ・ルノーとジャン=ルイ・バローの軌跡をたどる展覧会が、ミッテラン国立図書館で催されている。
 常に前衛でいようとするバローの活動にいちばん寛容で同時にいちばん厳しかったのがルノーだった。人妻だったルノーと恋におちたバローは、サルトルなど友人たちの反対にもかかわらずルノーが所属するコメディー・フランセーズの専属となり新風を吹き込むが、大戦後に生じた劇場幹部との意見の不一致によりふたりは揃って脱退し、独自の劇団を築く。このあとは流浪の民のごとく劇場を渡り歩くが、常に新しい試みに意欲的にとりくみながら、ふたりとも1994年にこの世を去った。
 会場の空間を埋め尽くす展示物のひとつひとつは、夫婦という絆を超え、フランスの演劇界に半世紀近く影響を与えた彼らの二人三脚の冒険を語り、華やかな舞台裏にはさまざまな葛藤があることも教えてくれる。6/20日まで。(海)
*月曜祭日休館、上映会・公演もある。
問い合わせ : 01.5379.5959.



 

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