汚染血液問題で元閣僚裁かれる。


 1982年にフランスで初めて発見されたエイズ感染者5人のうちの一人は血友病患者だった。エイズ発生当時首相だったファビウス現国民議会議長とデュフォワ元社会問題相、エルヴェ元厚生担当相を、汚染血液製剤問題で”過失致死”などの容疑で裁く共和国法院が2月9日に開廷した。
 共和国法院は、従来免責特権のあった閣僚も、職務の行使において行った行為に対し、被害者が刑事責任を追及できるよう1993年に制定された。しかし、裁判官は破棄院判事3人、上下院議員12人からなり、被害者は原告としてではなく証人として出廷するという、かなり公正さを欠いた法廷といえる。だが、ファビウス元首相にとっては、17年以来続く汚染血液問題での身の潔白を証明するため自ら望んでいた裁判なのである。この裁判は、主に三つの容疑からなっている。
1) 献血者の選別を怠る : 献血が拘置所でも行われ、HIV感染率の高い服役中の麻薬中毒者などからも採血されていた疑い。1983年6月の献血者選別通告にもかかわらず、ほとんど実施されていなかった。
2) 血液検査 : 米国は、血液中のエイズウイルスを検出するため、アボット社が開発したテスト法を1985年3月に認可した。仏側はパストゥール研究所による開発が遅れたため商業的な理由からか、アボット社製仕様の仏国内での認可を阻止し、血液検査の実施を遅らせた疑い。同年8月1日に血液検査を義務化したにすぎない。
3) 非加熱血液製剤 : 1985年10月1日以降医療保険による非加熱血液製剤の払戻しを停止したものの厚生担当相は、輸血センターが非加熱血液製剤の在庫を供給し続けることを認めていた疑い。この問題で、1993年に同センターのガレッタ元所長は”人命の救助を怠った罪”で禁固刑4年、罰金50万フランの判決を受けている。
 1985年3月時点で緊急措置がとられず、10月までに血友病患者を含む約350人の被輸血者が死亡したことに対し、法院検事は元閣僚3人の”軽率さ、不注意、怠慢”を告発する。またエルヴェ元厚生担当相がレンヌ市長を兼任し、かけもちでどこまで真剣に汚染血液問題に取り組めたのかと、行政制度の欠陥をも追及する。
 現場の医師に始まり、製薬会社、献血網、輸血センター、研究所、厚生局、閣僚に至るまでのピラミッド型医療制度。その医療体制の中で、エイズに感染した血友病患者には非加熱血液製剤を、非感染者には加熱した血液製剤を供給していたという事実も明らかになっている。
 また上記の訴訟とは別に、当時の輸血医や血友病患者の主治医、厚生省顧問ら17人の重罪院裁判も控えている。
 2月24日、検察側は被告3人に対し”無罪”を求刑しているが、判決がどうであれ、フランスの官僚制がうまく機能しなかったために起きたこの悲劇への怒りをはたして鎮めることができるだろうか。

(君)



 汚染血液製剤被害者への損害賠償
1369人 血友病患者被害者賠償
2964人 その他の被害者賠償
1580人 経済的損害賠償
10 672人 精神的損害賠償

67億6000万F 賠償金総額
150万F 被害者への平均賠償額
10~20万F 親族への平均賠償額
*Le Monde (99/2/17) : 被害者賠償基金の統計

 

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