●自転車あれこれ
自転車を表す言葉bicyclette
は英語のbicycleからきており、はじめは裕福な階層の乗り物だったから、今でも優雅な響きを持っている。もうほとんど聞かないけれど、
bicyclette から派生して、古びた機械を意味するbecane が俗語として使われもした。 男性よりもか弱い(と考えられていた)女性が自転車に乗ることについて社会一般は否定的で、1890年代にやっと女性のための自転車ファッションが検討し始められ
、長いスカートをどうするか、パンタロンを女性がはいていいものか…など、いま思うとばかばかしい話が真剣に討議された。 かたや velocipede の略語である velo は、語源をラテン語velox(「敏捷な」という意味)にもち、車の一般普及前は労働者階級の足として重要な役割を果たした。現在でも通勤や普段用の自転車、またはスピードを重視するレース用自転車をvelo という。
実は、フランスで最も早くvelo を使い始めたのは郵便配達夫たち。田舎道を回りながら郵便を配るのには時速6Kmで走れる自転車が重宝がられた。とはいえ、はじめはペダルもチェーンもな
かったから自分の足で土を蹴る必要があった。タイヤもダンロップ社が1880年代後半に大量生産を始めるまでは(ミシュラン社は3年遅れて市場進出)お粗末なものだった。パリでは稀だけれど自転車での郵便配達は現在も行われており、配達夫は3つの最新モデルから好きな自転車を選べるらしい。 近年は日本でマウンテンバイクと呼ばれるVTT (velo-tout-terrain)やVTC
(velo-tous-chemins) の進出が著しく、velo の敏捷性とbicyclette より広い行動範囲を持つこれらの自転車は、(格好は決して良くないけれど)確実に利用者の数を増やしている。
(海)
●ツール・ド・フランス98の見どころ
今年のツール・ド・フランスはアイルランドの首都ダブリンで 11日から開催。8月2日のパリ・シャンゼリゼまで走行距離は3850km。目玉は「クール・ド・リヨン」と呼ばれる敢闘賞が設けられたこと。各ステージ終了後にその日のレースを盛り上げた選手に贈られる。この賞を獲得した選手は翌日のゼッケン番号が赤色になる。優勝候補には昨年23歳の若さで制覇したドイツのヤン・ウルリッヒを推す人が多い。そして昨年3位になったイタリアのマルコ・パンターニも今年のジロ・デ・イタリアを優勝しており手強い存在。地元フランス勢は昨年2位のリシャール・ビランクと今年のUCI(世界自転車競技連盟)ポイントランキング1位のローラン・ジャラベールに熱い期待がかかる。
(蜂)
●モレッティのスクーターもいいけれど
自転車が出てくるフランス映画といえばジャック・タチの長編第一作『ジャック・タチののんき大将』(13)
が忘れられない。村祭りのアトラクションの映画で紹介された、飛行機まで動員するアメリカ式郵便配達の早いこと、早いこと!
あっけにとられた我が村の郵便配達夫(タチ主演)は悪酔いしてしまい、帰りの夜道でなかなか自転車にまたがれない。翌朝、すっかり「アメリカ式」に変貌したタチ郵便配達夫は、村の中を自転車に乗って超スピードで駆け回り、挙句の果てにはツール・ド・フランスのプロたちも追い越してしまい、勢いあまって川の中へ! 林の中、豊かな胸を揺らし、スカ−トをなびかせながら自転車で走り抜けていくベルナデット・ラフォン(初々しい美しさ)にあこがれる村のワンパク少年たちの物語、といえば、トリュフォーの中編『あこがれ Les
Mistons』。彼女と恋人ジェラールの接吻をのぞき見た彼らは嫉妬心にかられ…(真)
●警官にみつかったらたいへん !
日本みたいに歩道をスイスイ、走っていて警官にみつかったら230F の罰金です。赤信号や一方通行を無視したら車と同じく900F ! 荷台に14歳未満児は乗せられるけれど、それより年長者を乗せると違反。ライトは黄色を前に赤ランプを後方に付けること。夜間ライトなしで走って捕まると、罰金は3日以内に払えば 300F、1カ月以内なら450F。1カ月を超えると1200F
の付けが回ってくるので、早めに小切手か、タバコ屋で入手できる罰金納入用印紙(Timbre-amende) を罰金徴収書に貼って送ろう。
●自転車保険ってあるの ?
97年の自転車事故死亡者は 329人、負傷者はなんと7191人 !
自転車への特別な保険はないがマルチ保険に入っていれば、少なくとも他人に負わせた損害は賠償される。でも自転車ドロボウや損壊被害には手を打つ術もない。歩道の木や電柱に防犯チェーンで結わえ付けられたままサドルが取り去られているなんてのはザラで、両車輪もはぎ取られていたりする 。 それだけではない、ある友人がパン屋でバゲットを買う約30秒の間に鍵をかけなかった愛用の自転車が消えていた。でも鍵をかけていてもそのまま持って行かれることもあるので、電柱や鉄柵などに防犯チェーンでつないでおこう。
●国鉄・RER に自転車を載せて
ラッシュアワー以外の時間帯ならイル・ド・フランス地域内(パリ市内除く)で自転車といっしょに乗車できる。また、メトロの1番線には日曜だけ16h30 まで自転車を載せられる (Louvre, Grande Arche 駅での乗降を除く)! RERは、A線
Vincennes – Nanterre Prefecture 間以外の区間で、B線は北駅 – Cité Universitaire
間以外の区間ではラッシュアワーを除き(土日祭日は1日中)一番前と後ろの車両に載せられる。