とっても応援したい映画がある。デリケートな主題にノースターだから苦戦を強いられている。是非とも観に行って欲しい。『夢だと言って / Dis-moi que je reve』は、知恵遅れの青年を抱えた家庭の物語である。重くて暗くて辛くてシンドイ内容だ。が、この映画は一面、軽くて明るくて可笑しくて陽気でさえある。それは、この家族がなかなかユニークでちょっと破天荒なところがあるからか?
この家族のユニークさは、まさにこの知恵遅れの19歳のジュリアンの存在のお陰だ。彼が社会に迷惑をかけてくる度に家族は真っ青になりながら彼をかばう。彼を施設に入れるべきだという意見は再三出ているが、その度に母親を先頭に猛反対。今日まですんでのところで、この最悪の事態を回避してきた。しかし、ジュリアンも年ごろ、異性に興味を持って当然だ。弟のヤニックがガールフレンドと仲良くしているのを見て、自分もその気になってしまって、彼女を襲ってしまう。今度という今度は、もう社会的に許されない状況だ。せっぱ詰まった家族討議の最中に、おばあちゃんから爆弾発言が出る。この家庭には、重大な秘密が隠されていたのだ。一家の騒動は、予想もつかない方向へ大きく展開していく…。
監督のクロード・ムリエラは、ロケ先のローヌ・アルプ地方で見つけた素人俳優を中心に、荒削りで暖かい家庭像を、ドキュメンタリー張りの迫力で見事に作り上げた。家族そろって楽しく暮らしたい。そんな単純で素朴な愛情がこの家庭には溢れている。現代の多くの家庭が、なぜか置き去りにしてしまった基本的な感情だ。ジュリアンにみんなで日蝕の解説をする場面等、忘れがたいシーンがいっぱいだ。そして色々な問題を観客に休まず投げかけてくる作品。 (吉)