ゴロワーズ・ブルーの装丁で目を惹くエッセー集『フレンチ狂日記』(平凡社刊)が話題になっている。
タイトルがいわくありげなので、著者の永瀧達治氏(49)に、まずそのあたりから聞いてみた。
「若い人たちが<フレンチ>と気軽に言うのを聞いて、いいなと思ったんです。僕と同年代のいわゆる<フランスかぶれ>の人たちより、<フレンチ好き>の彼
らのほうに僕自身も感覚的に近いから。でもこの本、批判されたはずの大人たちにも結構受けてるらしいです(笑)」
音楽プロデューサー、フランス音楽評論家、翻訳家と多彩な顔を持つ永瀧氏だが、ここ2、3年は<ゲンスブール委員会>の主宰者兼若者たちの良き兄貴分と
しても忙しそう。
かつて永瀧青年がフランスに触発されたのは、ボリス・ヴィアン的人間への憧れからだったから、ゲンスブールに新しさを再発見した若者と通底しているのかも
しれない。
「ゲンスブール委員会? #あれはもうふしだらな集まりでねえ」と言って笑う彼は生粋の大阪人。そこで<大阪のパリ事情>を聞いてみた。
「最近、バスティーユのビストロ『ボファンジェ』が進出しました。店の表記を『ぼふぁんじぇ』にしたところがいかにもで面白いでしょ」
かぶれではない自然体の<フレンチ>感覚では、ラテン的な大阪庶民のほうに一日の長ありなのでは?
「いや、何か仕掛けようという動きはあるんだけど、大阪人は東京が嫌い。フランス文化はその東京の向こうにある感じで、まだまだですねえ」
どこかゲンスブール的風貌漂う永瀧氏に、最後に『フレンチ狂日記』を貫くテーマについて語ってもらった。
「日本人が失った精神性がフランスにはまだある。当り前のことを当り前と言える大人の感覚、それを是非取り戻して欲しかったんです」 (マ)