6月19日の国民議会議員選挙(総選挙)の決戦投票の結果、与党連合「Ensemble(共に)」が単独過半数を失った。打開策のため野党各派との協議が続いており、新政府への移行には時間がかかりそうだ。
マクロン政権を支える与党連合が改選前の355議席から246議席に大幅に議席を減らし、単独過半数を割った。左派連合Nupesは142議席、極右の国民連合(RN)は改選前の8議席から89議席へと大躍進。共和党+中道右派連合(LR-UDI)は64議席に後退。マクロン政権への反発からか、与党のフェラン国民議会議長、国民議会のカスタネール共和国前進党(LREM)会派議長がそろって落選した反面、NupesとRNを中心に新人が多く当選した。577議席中302人が初当選。NupesとRNでは労働者出身の人もおり、本紙でも紹介した元ホテル清掃婦のラシェル・ケケさん(Nupes)はその象徴的存在だ。
15議席のラインを超えたRNは会派を形成する。会派は議員数に応じて交付金を得られるほか、議席の割合に応じて各委員会の委員職に就くことができる。伝統的に野党第1党に割り当てられる財務委員長職は、野党第1党のRNに権利があるが、左派4党の連合Nupesは共同候補を立てて対抗する。Nupesは4党の団結を維持し野党第1勢力として影響力を強めていく方針だ。
与党連合が過半数を切ったため、今後の政権運営のための法案通過ばかりか、内閣承認も心許ない。マクロン大統領は総選挙後の22日、「妥協を築く」ことを野党に呼びかけた。政治運営が滞る可能性は野党次第と決めつける発言に対し、野党各派は与党が妥協案を示す側だと一斉に反発。最も連立の可能性が高いとされる共和党は、各法案に同党の意見を盛り込むよう要求していき、それによって賛成・反対票を投じるとして、野党にとどまる意向を明らかにした。
ボルヌ首相は大統領の意向を受けて、国民議会の各会派の代表と話し合いを続けている。組閣した上で7月5日に国民議会で施政方針演説を行う予定だが、Nupesのメランション氏は首相をテクノクラートと批判し、内閣不信任案を提出すると宣言しており、不信任の可能性は否定できない。
野党各派との協議が連立内閣誕生に結びつくのか、あるいは野党の政策を反映した施政方針で内閣信任に漕ぎつくことができるのか、状況は混沌としている。ドモンシャラン環境相、ブルギニョン保健相らの落選により内閣改造は必至だが、野党との協議内容により、かなり大きな改造になるかもしれない。(し)