電子版ル・モンド紙7月21日付は、「億万長者ピエール=エドゥアール・ステランの右派・極右に勝利をもたらす計画」と題した記事を掲載した。
ステラン氏は一般にはあまり知られていないが、体験型ギフト「Smartbox」の創業者で、レストラン予約アプリ「ラ・フールシェット(現ザ・フォーク)」を立て直してトリップアドバイザーに売却したほか、2009年には投資ファンド「オティウム・キャピタル」を創設してフレンチテックに投資するなど実業界では知られた人。フランスでは104番目の資産家(推定資産12億€)だ。ネット上のビデオメディアNEOや若者のメディアCrayon、近年は歯科サービス事業に投資している。つい最近ではニュース週刊誌「マリアンヌ」の買収交渉をしていたが、同誌の記者労組が極右の国民連合(RN)と関係があるとされる同氏への売却に反対するストを行なったため、交渉は棚上げになっている。
また、女性の人工中絶の権利に反対するカトリック信者であるとされる。共産党系リュマニテ紙19日付が報じたところによると、ステラン氏が昨年7月に創立した団体「ペリクレス」は、右派と極右のナショナリズムとイスラム嫌悪主義のイデオロギーを普及させ、政界に影響を及ぼすために10年間で1億5000万€の投資を計画しているという。同紙が報じた同団体の内部文書によると、団体はすでにRNのマリーヌ・ルペン氏とバルデラ党首に対して影響力を持っており、オティウム・キャピタルの社長でステラン氏の片腕フランソワ・デュルヴェ氏はルペン氏の腹心であるとか。
2026年の市町村議会議員選挙では300市町村をRNの手中に収めることを目標に、その市町村と候補者の選定や、候補者養成学校の計画が進められていることが記されているという。また、極右が2027年の大統領選と総選挙で勝利した場合、各省庁のテクノクラートや専門家になるべきRNや共和党の人材を育てる政治学院も同氏の腹心が経営しているという。先の総選挙で共和党のシオッティ総裁とRNが手を組んだことはこの計画の一環であり、ステラン氏に近い候補者が複数人、このRN=共和党共闘に参加したともいわれる。
当のステラン氏は、ル・モンドの記事に対し、RNを含む特定の政党は支持しておらず、「左派連合と極左以外のあらゆる候補者を応援する」と言明。また、デュルヴェ氏の政治活動はまったく個人的なもので、オティウム・キャピタルとは無関係とのメッセージを寄せている。(し)