テロ防止法案に司法関係者や識者から懸念の声

リベラシオン7月13日付「犠牲者支援  ――  国家の軽視」

 ニースのテロから一年になる7月14日、犠牲者86人の追悼式が行われた。マクロン大統領は、補償申請手続きの煩雑さや不透明さに不満を抱く遺族団体に対し、「(補償制度の)すべての維持を保証」「テロとの闘いをたゆまず続ける」と宣言した。

 そのテロとの闘いの一翼を担うテロ防止法案が国会で審議中だ。両院1回ずつのスピード審議で、上院では7月19日に可決され、10月の国民議会で最終成立する見込み。大統領は3日の両院合同会議で「非常事態を解除し、国民の自由を復活させる」と宣言した。しかし、11月1日に終了する非常事態に代わるテロ防止法は、非常事態下で「例外的に」採られていた措置の一部を通常の法律に組み込むもので、司法関係者、識者、人権擁護団体から懸念の声が上がっている。

 政府原案は、①テロのリスクがあるイベントや施設の区域を県知事が「保護地区」と規定でき、身体、荷物、車内検査できる、②テロ行為などを教唆する宗教施設は、県知事が最高6ヵ月間閉鎖できる(国務院勧告は4ヵ月)、③テロへの関与・賛美など治安を脅かす者への行政的家宅捜索は、判事の許可を得て県知事が決定、④自宅軟禁措置は非常事態と同様に県知事が決定し、出頭は1日1回とし、居住市町村内も移動できる。期間は3ヵ月ごとに更新可能(国務院は最長6ヵ月と勧告)、⑤盗聴の法的枠組みの規定、などだ。

 上院では、個人監視や家宅捜索などの措置の適用を2021年末までに限定し、その有効性を毎年評価する条項を加えた。また、「保護地区」の範囲を限定し、地区内の住民や勤務者の私生活保護を強化するなど、政府案をやや緩和させた。上院での修正が残るかどうかは不明だが、本来なら司法が決める措置が内務省(警察や知事など)によって採られるとして、リベラシオン紙が12日に「非常事態の常態化―法治国家の脅威」という大学関係者、研究者らの意見を掲載。司法関係者らは、「治安を揺るがす重大な」行為が拡大解釈される危険性を指摘する。この5年間で9つのテロ対策法が施行され、以前なら個人や言論の自由を侵害するとみなされた措置が堂々と法に盛り込まれた。実際にテロを意図する人を特定する精度の高い監視制度を構築する代わりに、フランスはテロ防止を理由に、広く浅く国民を監視する警察国家になろうとしているのだろうか?(し)