3月末に始まった気候・回復力法案の国民議会での審議が4月17日に終了した。採決は5月4日に行われる予定だが、この審議によりエコサイド罪の導入を含む将来の気候法の概要が明らかになった。
黄色いベスト運動を受けた全国討論の結果、マクロン大統領が地球温暖化対策を考える市民会議の設置を決めたのは2019年4月。翌年6月、抽選で選ばれた150人の市民が9ヵ月間の協議と聴取を経て作成した報告書を提出し、2030年までに温室効果ガス40%削減(1990年比)のための149の提案を行った。すでに法規や政策として存在するものなどを除き、46の提案が気候法案に反映されて2月に閣議提出。閣議でも国民議会の委員会でも何千件もの修正案が審議された結果、本会議にかけられた。
本会議の審議でも政府や野党からの修正案が1千以上出て、69条だった法案が218条に。まず注目したいのは、エコサイド(環境および生態系の破壊)が犯罪として刑法に追加されることだ。最高で禁固10年、罰金450万ユーロの軽罪で、10年以上続く重大な被害を及ぼした「意図的な行為」と限定されており、左派は過失行為も含めるべきと批判。逆に、右派は厳しい環境規制は経済活動を圧迫すると反発した。また、仏領ギアナの金鉱開発で問題になっているが、鉱山開発の申請を環境破壊を理由に政府が拒否できるようになる。2時間半(市民会議は4時間を提案)以内で移動できる鉄道路線がある場合は、航空路線が廃止される。2050年までに土地の新たな舗装化をなくすため、3千平米以上の建物の建築計画には商業整備委員会の承認が必要に。エネルギー効率の悪いF、Gレベルの住宅は2028年から、Eレベルは34年からは賃貸禁止に。すべての給食・社員食堂で週に最低1回は菜食を出す。ほかに、ディーゼル・ガソリン燃料の大型トラックの販売は、すでに昨年決定した乗用車と同様、2040年から禁止される。古い車を売って電動自転車に買い替える場合の援助金など、法案になかった修正案も追加された。一方で、燃料消費量と排ガス量が多いSUV(多目的スポーツ車)の広告禁止は広告収入の影響を考慮して否決された。
左派、環境保護派からは、経済への影響を考慮した与党修正案によって市民会議の提案から大きく後退し「まったく不十分」との批判が多い。だが、地球温暖化への危機感や環境保護意識の高まる市民からの提案が法案に反映されたことには大きな意義がある。上院審議は6月、最終成立は夏頃の予定だ。(し)