Q:レストランAccentsのオーナーになった経緯を、教えていただけますか?
杉:もともと独立を考えていたわけではなかったのですが、La Truffièreのときのお客さまのひとりが、デザートを気に入って、出資したい、とおっしゃってくださって。「パティスリーでも、サロン・ド・テでも、どうぞ好きなお店を」と任せていただいたけれど、「やっぱり、レストランのデザートがやりたい」と自分から提案しました。
Accentsの料理長のロマン(29歳)とソムリエのエティエンヌ(32歳)は、以前の同僚だったのですが、声をかけて集まってもらいました。ロマンは仕事のきれいさと責任感の強さ、エティエンヌはワインへの情熱と海外でも働いていた広い見識が、誰よりも信頼できたので。
Q:Accents(アクソン)という店名の由来は?
杉:日本語でアクセントですが、訛り(なまり)を聞くと、その人の出身や育った場所が想像できますよね。外国人はもちろん、フランス人でも、地方によって話し方に違いがあります。
Accentsの料理とデザートも、そんなアクセントがあるものにしたくて。どこからやってきた食材で、誰がつくった、どんなひと皿を食べているのか。お客さまに、味わいながら、おどろきや発見を感じてもらえたら。
じつは、わたし自身、日本人シェフだから和の食材、というイメージを避けていた時期もありました。グリーンのデザートにすると、必ず抹茶だと思われるのがイヤだったり。でも、肩の力が抜けてきたのでしょうか、今は大声で「わたしは日本人です!」と言いたい気分です(笑)。お気に入りの和の食材は、ワサビ。フランボワーズやグレープフルーツと組み合わせたデザートを、ぜひ食べてみてほしいです。
Q:シェフ・パティシエ兼レストラン・オーナーならではの、むずかしさは?
杉:レストランの調理場で、締めくくりのデザートを含めた料理全体を仕切るのは、やはり料理長。なので、料理のことは食材の仕入れからすべてロマンにまかせています。パティシエとしては、料理長ともう5年ほどのつきあいなので、毎週変わるメニューをいちいち確認し合わなくても、そのときの食材で料理とデザートのバランスが自然とうまくいく、そんな関係ができています。
でも、オーナーとしては、この1年半、本当にいろいろとありました…(苦笑)。今、心がけていることは、わたしの気持ちを100%は出さないこと。料理長とソムリエと自分の3人のチームワーク、バランス、舵をとるときには、一歩引いてみる。そうすると、どんな場面からも、学べることが必ず見つかります。
Q:最後に、これからAccentsでやりたいこと、今後の目標を教えてください。
杉:オープンから1年半を経て、いま、やっと本当のスタート、と感じています。だから、まずは、とにかくお客さまを増やすために、日々、目の前のことに取り組んでいきたい。でも、料理長もソムリエも星付きレストランの出身なので、「ガストロノミーをやるなら星を獲りたい」と、きっと思っているはず。
まだまだその道のりは遠いですが、どんなことでも上を目指す姿勢は大事ですよね。わたしも「よし、行けるところまで、行ってやろう!」という気持ちは同じです。
ACCENTS table Bourse
Adresse : 24 rue Feydeau, 75002 ParisTEL : 01.4039.9288
アクセス : M° Bourse
日月休 現在、夏季休業中。7月31日(火)より営業。