
米露のウクライナ停戦交渉が始まるなか、フランスの呼びかけで2月17日、欧州連合(EU)主要国の首脳と欧州理事会議長、EU委員長、北大西洋条約機構(NATO)トップがフランス大統領府で緊急会議を開いた。会議後の共同声明などはなく、今後も協議が継続されそうだ。
14~16日に開催されたミュンヘン安全保障会議で米政権ウクライナ特使を務めるケロッグ氏が停戦交渉に欧州が参加することはないと発言し、同時に「欧州諸国がウクライナの安全保障のために何ができるか」と問う書簡を米政権が欧州各国に送ったことを受け、マクロン大統領のイニシアティブで17日に緊急会議が開かれ、シュルツ独首相、スターマー英首相のほか、伊、スペイン、ポーランド、オランダ、デンマーク(バルト三国とスカンジナビア諸国の代表として)の各首脳、コスタ欧州理事会議長、フォン・デア・ライエンEU委員長、ルッテNATO事務総長が参加し、主にウクライナ停戦後の安全保障について協議した。
会議の詳細は公表されなかったが、停戦が実現したのち、ロシアが再び攻撃をしかけないように欧州軍をウクライナ領土内に配備することが検討されたとフランス外交筋は明かした。仏、ポーランドは派遣に意欲を示し、英首相は持続的和平合意が成れば兵士を送ると発言。オランダは米国の支援があるなら平和維持軍への参加の可能性を示唆、独、西、デンマークは兵士派遣の協議は時期尚早とし、伊は軍隊派遣は困難な上に非効率的と批判し、足並みはそろわない。米国は自国軍の駐留はしない考えと言われており、米の支援や参加なしに平和維持軍活動は難しいと考える国もある。ロシアやベラルーシとの国境を守るためにゼレンスキー大統領は20万人、軍事専門家は5~10万が必要としているが、現実には欧州全体で2.5万人(うち仏5千~8千)の派遣が可能と考えられている。
この緊急会議に招待されなかった国、とくにウクライナと国境を接し、ウクライナ支援と欧州防衛のために仏兵1000人の駐留を受け入れるルーマニア、そして弾薬共同購入計画を推進し、ウクライナ支援に熱心なチェコなどは不満を唱えた。それを受けて、19日にはこの両国のほか、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、バルト3国、カナダなどが第2回目の緊急会議に追加で招待された。
フォン・デア・ライエンEU委員長は14日、EU加盟国全体の防衛費はウクライナ戦争前の2000億€から昨年3200億€と、それほど増えておらず、今後数年間で5000億€にするべきと発言。そのために各国の財政赤字が国内総生産(GDP)の3%以内にするEU規則の例外措置を認めるようにするべきとした。
18日にサウジアラビアで始まった米露交渉から完全に締め出されたことで、欧州は停戦条件や停戦後についての話し合いにも参加できないことに危機感を募らせている。マクロン大統領らは、以前から欧州共同防衛構想を打ち出していたが、ウクライナ停戦後の欧州全体の安全保障面の不安から、欧州はますます自前の防衛の必要性に迫られているといっていいだろう。(し)
