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Restaurant Kozo: レストランは”劇場” 、料理はお客さまの名脇役。

N° 863 2018-11-22

Q：まずは、この秋のRestaurant Kozoのオープン、おめでとうございます。「オーナーシェフになろう」と決心されたのは、いつ頃からですか？

牧田：ランスのLes Crayèresのあと、当時サン・エティエンヌという小さな村にあって、かなり独創的と評判だったLe Neuvieme Artでも勤めましたが、妻の妊娠をきっかけにパリに戻ってきた2014年頃から、独立を考え始めました。でも、きっと料理の道を選んだときから「いつかは」と思っていたのでしょうね。日本で働いていた頃から、経営の勉強もしていましたし。やっぱり、シェフがオーナーでないと、本当にやりたいことはできないんじゃないかな、と。もちろん、オーナーだからこその制約や、全部自分に返ってきてしまうリスクもあるのですが。

Q：今夜のお料理は、カワカマスのクネル、エスカルゴとジロール茸、玉ねぎのフランなど、フレンチの王道ではあるけれど、どこか新しい味がする、印象に残るひと皿ばかりでした。

Quenelle de brochetカワカマスのクネルと、Escargots, Girolles, Cresson, Ailエスカルゴとジロル茸、クレソンとニンニクのお料理。

牧田：基本的には、どれもクラシックなフランス料理。そこに少し手を加えたり、アレンジしながら、頭の中にある理想の味に近づけていっています。今日のエスカルゴにはガトーショコラ、フランにはチョリソーとアンチョビを合わせました。リヨン名物のクネルはパリではめずらしいですが、ミシェル・ロスタン氏へのリスペクトを込めて。白味噌を加えたソースで、うちの店のスペシャリテにしたいな、と考えています。

Q：そんなお料理に、ワインだけでなく、純米酒や山崎ウィスキーなどが用意されているところもおもしろいです。

牧田：ワインはMichel Rostangで同僚だったソムリエにセレクトしてもらっていますが、日本酒やウィスキーは僕が自分で選んでいます。フランスでお客さまに日本の食文化を伝えることも、日本人シェフとしての役目かな、と思っていて。うちのレストランでは、パンにバターの代わりに豆腐入りマスカルポーネを添えているのも、そのひとつ。

あと、チーズと日本のお酒は、本当に相性がいいんですよ！　チーズを仕入れているFromagerie HISADAの、マンステールの梅酒マリネとか。近所のフロマジュリーで買ったチーズを自分で日本酒に漬けておいて、お出ししたりもしています。

Q：シェフお一人でお料理もデセールもサービスもされる姿は、ひとつの完成された世界、ワンマン・ショーのようで圧巻でした。

他に人がいないもので！（笑）でも、たしかに、ひとりで前菜からデセールまでやっているからこその、安定した完成度はあるかもしれません。甘いものを作るのもすきなので、楽しいですし。だけど、やっぱり、ひとりではできることに限りがあります。調理する順番や料理を運ぶタイミングを計りつつ、”Inspiration saison”というムニュの名前の通り、僕のひらめきで即興のように対応させていただいていますが、どうしてもお客さまをお待たせしてしまう場面もあったり…。

レストランが次のステップへ成長できるよう、まずは”フランス演劇”のようにお客さまを楽しく盛り上げてくれる、すてきなサービススタッフと出会いたい。そして、もっともっと大きな可能性にチャレンジしていきたいですね。

Q：これからの”Kozo劇場”も楽しみです！　今日はありがとうございました。