今年もオゾンの新作がやってきた。今回はタイトルそのままに、この季節にぴったりな作品。同時に、人生の黄昏の年代を生きる熟年女性たちのドラマとなっている。
ブルゴーニュの田舎町に住むミシェル(エレーヌ・ヴァンサン)は、悠々自適のひとり暮らし。家庭菜園や料理を楽しみ、親友のマリ=クロード(ジョジアーヌ・バラスコ)とは森へキノコ狩りに出かける。冒頭、カメラは丁寧に、上品な老婦人の日常を写してゆく。が、まもなく穏やかな日々に変化が。親友の息子が出所し、パリに住む娘は秋の休暇に愛孫を預けに来る。さらに、思いもよらぬ事故(?)も発生し……。
走り続ける鬼才フランソワ・オゾンの長編23作目。物語が進むにつれ、登場人物の意外な過去や、母娘の確執が露わに。さらに、親友の息子の曖昧な存在感が加わり、疑いや罪悪感が渦巻くミステリードラマの様相を呈する。
これみよがしの演出はない。淡々と良質なミステリーを量産する流行作家のようなメンタリティーで、監督は手際よく秀作をこしらえてしまうのだ。先のヴェネチア映画祭ではペドロ・アルモドバル監督が、“熟年女性の友情の物語”で金獅子賞を獲ったばかり。本作もその同じモチーフが伺える。ただし、両監督とも時流に乗ったわけではない。#MeToo運動の前から熟年女性のドラマを手がけており、演出にも自然体の余裕を感じさせるのだ。
若い時にオゾン組で主演を務めたリュディヴィーヌ・サニエとマリック・ジディが、人生の苦味を体現する大人の脇役で登場するのも感慨深い。皮肉や辛辣さは保ちつつも、人間という存在全体への温かなシンパシーが感じ取れる作品。オゾンは監督としても円熟の秋にさしかかっている。10/2公開。(瑞)