Mougins
幸せな夏の日々、そして終の住処、ムージャン。
地中海から6キロ内陸にあり、カンヌの北に位置するムージャンは、道が渦巻き状になった中世の古い町だ。この町に仮住まいをしていた友人の画家、フェルナン・レジェの招きを受け、ピカソは1936〜38年の毎夏滞在した。
当時の恋人で写真家のドラ・マール、詩人のポール・エリュアール、その妻ニュッシュと一緒だった。エリュアール夫妻は民家に部屋を借り、ピカソとドラ・マールは、ブイヤベースで有名な近くのホテルレストラン「ヴァスト・オリゾン」に宿泊。写真家マン・レイとその恋人アディ、マン・レイの元弟子で写真家のリー・ミラーらもグループに加わった(前のページの写真)。
ヴァスト・オリゾンは、ピカソとドラ・マールが滞在した部屋を公開*している。2階のその部屋からは、カンヌの海まで見渡せる。家具は当時のものではないが、ピカソがいた頃をほうふつさせる居心地の良さそうな部屋だ。ある夜、ピカソは壁に枠を描いて、枠内に友人たちと絵を描いた。ところが翌朝、美術に疎い宿主から怒られ、絵を塗りつぶして壁を元通りにさせられたという逸話が残っている。
町のはずれには、終の住処(ついのすみか)となった邸宅 「マ・ノートル・ダム・ド・ヴィ」(私有地のため見学不可)がある。1961年から、同年結婚したジャクリーヌと住み、ここで最後まで精力的に制作した。
ピカソは夜型で、制作も夜。夜中まで開いているムージャンの食料品店にタクシーで買い物に行くこともあった。本来ならばムージャンに墓があっていいのだが、死後も人に邪魔されたくないというジャクリーヌの意向で、150キロメートル離れたもう一つのピカソの所有地、ヴォヴナルグ城に葬られた。ここも私有地のため見学はできない。
● Office de Tourisme de Mougins :
Add : 39 pl. des Patriotes 06250 Mougins
Tél:04.9292.1400
6〜10月:無休、10h-18h
mouginstourisme.com
*ヴァスト・オリゾンは「ピカソの足跡をたどるツアーSur les pas du Maître」(徒歩)に参加しないと見学不可。申し込みは観光局で。
▶︎国鉄ニース駅からは車で30分ほど。