1月11日、アタル首相が組閣した翌日から、新任アメリー・ウデア=カステラ教育相(以下AOC)が非難の的となり、辞任を求める声が上がっている。
組閣の翌日、アタル首相(前教育相)は、AOCと引き継ぎの儀を行ったが、それとほぼ同時にニュースサイト「メディアパルト」は、AOCが息子3人を私立スタニスラス校に通わせていたことを報じた。教育大臣が子どもを公立校ではなく私立校に入学させることは、アタルの前のンディヤエ大臣も批判されていた。公共教育は社会のさまざまな立場の人たちが平等に、無宗教で、同じ教育を受け交流する場だが、私立学校は有料であり平等ではないこと、また社会的に似た立場の人たちが集まる。教育相にはまず公立学校を整備することが要求される。それに加え、スタニスラス校はパリ6区にある超保守カトリック校で、公教要理授業の義務付けや、ホモの生徒に「治療」をすすめるなどの違法行為が行われてきたことが問題視されている。
新・旧教育相は引き継ぎの後、ふたり揃ってイヴリーヌ県の小学校を訪問。記者たちが上述の記事について問いただすと、AOCは「3人目の息子は、2009年公立学校に短期間通わせたが、欠席する教員の交代がないことが多かったたため私立校に入れた」と返答。この発言で「公立学校を軽んじている」、「下層の人たちを侮っている」などと批判されるようになったが、さらにその後、リベラシオン紙がAOCの息子の担任だった教員を取材し、AOCの答が事実と違うことを報じ、火に油を注いだ。
AOC教育相は45歳、テニス選手として好成績を残し、エリート校ENA(フランス行政学院)ではマクロン大統領と同級生。 仏テニス連盟の取締役なども務めたが、この時代の50万ユーロの年俸も話題になっている。夫は製薬大手サノフィ社長のフレデリック・ウデア氏。
AOCはボルヌ内閣ではスポーツ相だったが、アタル内閣では国民教育、若者、スポーツとオリ・パラリンピック大臣を兼任することになり、新内閣が発表された時からすでに教員労組などから、教育相は片手間でできるものではない、などと批判されていた。
これを機に、スタニスラス校でのホモ嫌悪発言、IVG中絶の犯罪視などがくりかえされてきたことが、次々と明るみに出てきた。昨秋は、娘がLGBT擁護や差別的な教員たちに反対の姿勢を示したことで退学処分にされたという親からの通報があったと報じられている。
私立の学校でも、学習要領などで教育相と契約を交わしているスタニスラス校には、国と市から助成金が支払われている。メディアパルトの記事を受け、パリ市は、昨年度スタニスラスの幼・小・中校に137万ユーロを支払ったが、国が事実を明らかにするまでは支払いを停止することを発表した。
教育相として、これから公立と私立、全学校の問題を解決していかなければならないウデラ=カステラ氏。「個人的な問題にはもう終止符を打ちたい」とメディアに語ったが、これは個人だけの問題ではない。教員不足を訴えながらも状況が改善されないなか、新大臣に侮辱された公立校関係者もそうすぐには忘れてくれないだろう。(六)