春の予感は黄色から始まる。水仙に黄梅、たんぽぽ、そして、なんといってもミモザ。パリでは花屋の店頭に、あるいは切り花として路上で売られる。「ミモザ祭」や「ミモザ街道」がある南仏では、立春の頃から咲き始める。今年は寒波の影響で、雪をまとったミモザに。ミモザ前線は今、北へ向かって上昇中だ。
ブルゴーニュのある村で、ミモザの大木を見かけた。それまでは実のところ、切り花でしか見たことがなかった。大きな黄色い木の枝が風になびく度に漂ってくる芳香に魅了される。そんな村で出会ったヴァレリーさんは、切ったばかりの花を両腕に抱えていた。村の人たちは満開になると枝を切り、家に飾ったり、お土産にするそうだ。村の人たちに剪定(せんてい)されながら、この木は何十年、こうして枝葉を広げてきたのだろう。
友人が昨年植えたミモザは50センチの苗木だったのが、今年はすでに背丈ほどに伸び、その発育の速さに目を見張った。切り花にする場合は、蕾のうちに切って水に挿しても花は開かぬまま枯れてしまうので、花が咲くのを待ったほうがいい。
黄色の花から、白い花の景へと季節は移ろい、そして新緑を迎える。この黄色い花の香りが伝わるだろうか。(麻)