エッフェル塔にもほど近い、16区の閑静な住宅街パッシー地区にあるワイン博物館が、「Le M. Musée du vin」として昨年、装いも新たにオープンした。これまでの博物館部分に、おしゃれなレストラン、バー、イベントスペース等が加わった。
1984年にオープンしたワイン博物館は、長らく「Le Conseil des Echansons de France」というワイン愛好家協会が所有し、博物館機能に加え、ワイン関連の式典等に使用されてきた。しかし、2023年2月に現在の経営陣の手に渡り、改装工事が続けられてのオープンだった。レストラン、バースペースなどを使って10人から200人までの貸切イベントが可能。セミナールーム、また宿泊ルームを備えた貸切スペースもある。週末には一般向けのワインスクールも行われており、初心者向けの入門コースからチーズとのマリアージュなど、テーマ別の試飲クラスが行われている。1回から申し込めるので、ワインを気軽に学びたいなら要チェックだ。
とはいえ、この施設の主役はあくまで博物館。なにしろ、この博物館のある場所だけでも、歴史的にみて非常に価値がある。この博物館あたり一帯の地下では、13世紀から18世紀にかけて、地下海抜マイナス37メートル70センチの地点で、ルテシア紀(約4500万年前)に堆積した石灰岩の採掘がされており、これを使ってパリの多くの建物が造られた。当然、採掘されたスペースは空洞となり、そこには全長7kmものカーヴ(地下倉庫兼通路)が完成。この石灰岩を使って建てられたものの一つに、14世紀に現在のベートーヴェン通りにあった修道院があったのだが、これがカーヴの一部を自家製ワインや食材のための倉庫として使用しており、その部分が今の博物館になっているのだ。
このカーヴには、意外なストーリーもある。18世紀には、このカーヴは地域のいくつかの邸宅の地下につながっており、18世紀半ばには、借金取りから身を隠していた作家のオノレ・ド・バルザックがこの地下出口を使って出入りしていたという。
とかく難しいと思いがちなワインも、フランス文化のひとつだと捉えれば楽しく知ることができる。この博物館には、ガロ・ロマン時代から現代に至るまでのワイン造りにまつわる展示品が2200点以上も揃っており、醸造方法からフランスワインの歴史、使用する器具や保存容器、ワインを飲む器に至るまで、さまざまな事を実際に見て学べる。ワインが好きな大人はもちろんのこと、歴史に興味がある子供たちにも、ぜひおすすめしたい。
Le M. musée du vin
Adresse : 5 Square Charles Dickens 75016 Paris, Paris , Franceアクセス : Passy
URL : https://www.lemparis.com
博物館入場料 : 15€ / 18歳未満10€。日月休、10h-18h。