中世から続く職業訓練制度 「コンパニョナージュ」

メゾン・ド・パンタンのアトリエ。バッグ作りに集中する若者たち。

メゾン・ド・パンタンとPEMS 

パリ近郊パンタンには、AOCDTF*の修行中の若者やコンパニョンが宿泊しながら研修できる施設 Maison des Compagnons du Devoir de Pantinがある。総面積は7000m2で、1階のオープンアトリエでは職業による区切りなく、靴やバッグを作る人や、セリエ(元は馬具職人、今は車の椅子、スポーツバッグまで幅広い)が隣り合って研修や作業をする。

コンパニョンを目指す若者だけでなく、社会人向けの研修も同じスペースを使う。教室や食堂もあるし、2~5階には宿泊部屋がある。個室と二人部屋が104室あり計140人が滞在。個室は10m2強。ベッド、机、洗面所、シャワーWC付きで月650ユーロ(リネン、月~金の昼夕食含む)。入居者は企業の職業訓練の給与で滞在費をまかなう。

 

ここには、靴職人、セリエ、タピシエ、革製品職人の4つの職業を対象とする、柔軟素材優良拠点(Pôle d’Excellence des Matériaux Souples:PEMS)、柔軟素材研究所(Institut des Matériaux Souples)というAOCDTFの全国16ヵ所の研修・研究センターの一つも併設。その4業界と協力して、日仏間のJ.M. WESTON賞などの作品コンクール、6~18歳の子どもにモノ作り出張授業を開くプログラムのほか、業界と提携した新素材・技術開発、展覧会、若者の訓練先探しなどを行う。

 

 

インタビュー「フランスを巡回、または、巡回中の若者たち。」

Apprenti (見習い)期間を終え職業免状(CAP、BP等)を取得したら、Aspirant(志望者)/Itinérant(巡回者)として修業の旅に出る。旅を終える頃に作品を提出し、審査に合格すれば、晴れてコンパニョンとして認められる。

アポリーヌ・ルガルガンさん。

「集団生活で色々な職業の人と助け合う」

22歳 / パリ首都圏出身 / 皮革職人見習い
アポリーヌ・ルガルガン さん

パリ・ソルボンヌ大学で美術史の学士号を取った後、昨年7月、コンパニョナージュに入りました。ヴァンデ県にあるルイ・ヴィトンのアトリエで6週間の職業訓練と、ここパンタンでの2週間の研修を交互にしています。夏までにCAPを取得してツールに出ます。ここでは8h~17h30の研修後に、夜は自分の作品作りをするので結構キツい。食堂ではブラウス着用などの規則もあるし、他の人に比べて年上だから集団生活は最初不安でしたが、いろんな職業の人と話したり、助けてもらったりしているので満足です。

 

ロバン・レニエさん。

「旅ができるのがいい」

18歳 / ナルボンヌ出身 /
フランス巡回中のパン職人
ロバン・レニエ さん

「AOCDTFの一般開放日でコンパニョナージュを知り、入って4年目。ニームのパン屋で2年間の研修の後、ツールでリールからパリへ。パン屋で3~12時仕事しつつ、2ヵ月毎にストラスブールのCFAで1週間理論と実践の授業を受けます。この制度のいいところは旅ができること。日本文化に興味があるから来年は日本に行きたい。前は自分のパン屋を開きたいと思っていましたが、今は職業学士号を取りパン粉の研究と開発をしたい」。

 

エマレア・マレシャルさん。

「この経験は、私の人生への最高のプレゼント」

26歳 / ブルゴーニュ出身 /
パンタンで靴づくりの講師(コンパニョン)として勤務
エマレア・マレシャル さん

「コンパニョナージュに入って7年。自分が何をしたいのかわからなくなり、高3でドロップアウトした時、美容師のおばからコンパニョナージュの話を聞き靴職人を目指したいと思ったの。正解でした。バカロレアを取ってから入りなさいとAOCDTFに言われたので、高校3年をやり直してBacを取得。最初の職業訓練先での処方靴士研修で半年経ったころ、靴づくりは自分の宿命かもと思ったし、この制度が自分に合っているとわかりました。

ツールではオセール、パリ、マルセイユ、そしてメルボルン11ヵ月+東京2ヵ月修業。コンパニョンになって、去年からパンタンのメゾンで講師をしています。コンパニョンになってからも後輩にノウハウを伝えるための2年間の「義務」があるので。

この制度のおかげで、メゾンでいろんな職業の人と出会いながら成長したと思う。とくに外国に行けるのがいい。日本ではより効率的で精巧にという職人の姿勢、品質の大事さ、時間をかけても完璧な仕事をすることを学びました。あと、日本人の「おいしいものへの愛」にはすごく共感。

将来の夢は、ニュージーランドかカナダに1年行って英語を磨き、南仏に自分のアトリエを持つこと。コンパニョナージュは私の人生で最高のプレゼント。この職業訓練がなければ、自分の道を見つけられなかったでしょう。

研修は無料で、職業訓練でもらうお金でメゾンの滞在費も払える。オーストラリアと日本への渡航は奨学金制度や「Défi Innover Ensemble」コンクールの賞品の旅行券1200€を充てました。ツール、外国、コンクールなど常に前進できるシステムはほかにないと思う。ただ一つのデメリットは企業での訓練、夜の授業、旅などスケジュールが過密で、家族や友人に、あまり会えないことかな……。安定を求める人には向いていないでしょうね」。

 

ジャン=バティスト・アダムさん

「ツールでフランス各地の建材を知ることができた」

27歳 / レンヌ出身 /
パリのメゾン在住、屋根ふき職人コンパニョン 
ジャン=バティスト・アダム さん

バティストさんが携わっている、パレロワイヤルの屋根。

「今はパリのパレ・ロワイヤルの屋根のスレートを仏文化財建築家の監督下で張り替えています。工業メンテの上級技術者免状(BTS)を取った後、エンジニア学校を目指していたのですが、いとこの屋根葺き職人コンパニョンの話を聴き、自分には目に見える、屋外の仕事が向いていると思って6年前にAOCDTFに入りました。

ショレー、ブルジュ、ボルドー、バイヨンヌ、スイスと回り、その後ディジョンを経てパリに。いろんな町に行くことはその土地独特の屋根の素材を知る上でも興味深いです。スイスでは、銅の使い方ときっちり細かい仕事を学びました。1日の仕事の後、20~22時はパリ郊外のCFAで後輩に教えています。スコットランドかアイルランドで仕事してから、将来は自分の会社を興すか、勉強してエンジニアリング会社に入ろうかと考えています。この制度の長所は、出会いと分かち合いかな」。

 

上遠野(かとうの)冬美 さん。

「コンパニョン仲間は一生のもの」。

27歳 / 横浜市出身 / パン職人コンパニョン
上遠野(かとうの)冬美 さん 

「4歳のとき、TVでアフリカのストリートチルドレンがパンを分け合って食べる姿を見て、パン屋になろうと決め中学卒業後、単身トゥールへ。現地で中学4年を終えてからAOCDTFに入りました。2年後にCAPを取得し、ツールでレンヌ、リール、ストラスブール、マルセイユ、ボルドー、パリと6年回り、地方ごとに特徴あるパン作りを体験できました。

コンパニョンになった後も2年間、パンの種類や製パン法を実習で後輩に教えました。ツールの間にパン職人の各種免状を取得し、今も製粉・穀物の職業学士号を取得中です。3年半前からパン作りを別の角度から見たいと思い、パリ郊外の製粉会社の研究開発部門で酵素や新材料などの研究開発に携わっています。

今の夢はMOF(最優秀職人)のコンクールに挑戦すること。研修中は仕事に加えて授業や実習がキツいですが、家族のような連帯感があるのはコンパニョナージュのいいところ。コンパニョン仲間は一生のものです」。

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