「新時代のブリジット・バルドー」と称されるザイア・ドゥアールはアルジェリア出身のモデル。17歳だった2010年、サッカー仏代表選手への売春を報じられメディアの餌食になった。だが本人は女優業やデザイナー業に進出しマイペースを貫く。そんな彼女に親近感を抱くレベッカ・ズロトヴスキ監督は、光あふれる南仏を舞台に自由を希求するマグレブ女性の夏物語を紡いだ。
バカンスシーズンに入った南仏カンヌ。母と二人暮らしの女子高生ナイマ(ミナ・ファリッド)のもとへ、22歳の従姉妹ソフィア(ザイア・ドゥアール)がパリからやって来た。若い二人はビーチやディスコに繰り出すが、セクシーなソフィアは目立つ存在。二人は美術商の男性と知り合い高級ヨットに出入りする。
タイトルの「Une fille facile」は通常「尻軽娘」とも訳されるが、ソフィアは一般にイメージされる尻軽娘とちょっと違う。そもそも彼女の名前 “ソフィア”は“英知”を意味するが、言葉からは地頭の良さもにじむ。ブルジョワ婦人(実生活でヴェネツィア=ピエモンテ公妃のクロチルド・クロが嫌味な存在感で好演)の挑発にも引っかからない。
「“Une fille facile”と言われるこの女性は、私の目には力強い女性。社会が軽蔑しがちな女性に別の視線を提供したかった」と監督。女性監督によって新しい女性像が示されるのだ。
しかし本作の素晴らしさは、 昨今流行りの「女性応援映画」で満足しないところ。胸に残るのはむしろ心地よくほろ苦い青春の後味。季節の終わりが少女時代の終わりの気分に寄り添う。ロメール、ロジエ、ポダリデス、ブラックと綿々と受け継がれる仏バカンス映画監督の系譜に連ねたくなるのだ。(瑞)