何年も前から問題になっているフランス海外県の物価高問題で、マルチニックのベルナール・ハヨット・グループ(GBH)に対してカルテルなどの容疑で捜査が進められていると、12月下旬に仏紙が伝えた。
GBHはマルチニックで1960年代に養鶏から出発し、その後はグアドループ、仏領ギアナ、レユニオンなどの他の仏海外県でもカルフール、デカテロン、DIYなどのフランチャイズを展開する小売業や、自動車販売、ラム酒製造、セメント製造など300以上の会社を有し、計1万8000人を雇用し、年間50億€の売上(2024年)を計上する複合企業だ。
アンティル諸島では2009年に続き、最近では2024年秋、物価高(とくに食料品価格は本土より4割高い)に対する住民の抗議運動や暴動が起きた。この件で労組CGTのグアドループ支部や市民団体が同年6月に告訴。やっと2025年8月末になってGBHに対する捜査が始まった。今回の捜査の焦点は、海外県での自動車販売において他企業とカルテルを結んだり、メーカーに対してマージンを隠したりといった独占的地位を濫用した容疑だ。GBHは本土の3~4倍にあたる18~28%のマージンを海外県で得ているといわれる。
この告訴は、海外県の物価高問題について2023年7月に公表された国民議会調査委員会の聞き取りなどを基にしている。それによると、現地の複数の大手流通業者は多様な部門で事業を展開しているため、その寡占的地位を利用して市場価格を恣意的に決定しており、同じグループに属する仲介業者がそれぞれマージンを取るため物価を押し上げる仕組みになっていると指摘する。
原告の弁護士は、「海外領土の物価高は構造的なもので、奴隷制と植民地主義の遺産だ。昔の奴隷制擁護者の子孫が経営する海外県の流通大手は地元の農業・工業生産の発展を阻害し、(外から仕入れる)低品質の商品ばかりを販売する」と批判する。
マルチニックでは、4つのファミリー企業(GBH、CréO、パルフェ、SAFO)が小売市場の80%を占めるが、パルフェ以外は17世紀に欧州からやってきた入植者の子孫「ベケ/béké」である。それぞれの企業はカルフール、ルクレール、リーダープライスやハードディスカウントのスーパーをフランチャイズで展開する。その上、これらの企業の決算書は公表されておらず、国の監督が及んでいないという。マルチニックの経済誌によると、同島では約100家族(人口の1%にあたる3000人)が全農地の55%を所有し、「旧植民地生まれの白人」が島の工業の11%を有し、1万5000人を雇用する(就労年齢人口の1割)寡占状態があるという。
物価高が問題になった2024年秋の時点で、標準的ブランドの米1㎏が本土では3.32€だが、マルチニックでは6.05€と82%も高く、パスタ、砂糖、植物油なども92%~111%も高かった。フランス政府はマルチニック住民の購買力向上のために付加価値税率の軽減、電気やガソリン・軽油の減税などの対策を実行した。しかし、状況は改善されておらず、依然として物価全般は本土より9%高い。失業率も2022年で本土が7%なのにマルチニックは13%、貧困率も本土15%より高い27%だ。
先の国会調査委報告書も、本土と海外県の間の商取引の仲介業者(GBHなど)のマージンの存在を指摘し、「植民地時代から続く植民地経済モデル」(本国を豊かにするために植民地を利用する方式)と形容している。同じ国民でありながら旧植民地の住民が搾取されるシステムは改善できないのだろうか? 今後、捜査が進展し、将来的にはて公正な価格が実行されるようになることを願う。(し)


