ウィリー・ロニス(1910-2009)は、20世紀フランスの代表的な写真家の一人。多くの展覧会で作品を見てきたが、これほど彼の豊かな人間性と、人々への共感がこもったまなざしを感じた展覧会は初めてだ。
見どころはパリ20区を撮った作品群。1947年、妻の友人でメニルモンタン出身の画家に誘われ、初めてベルヴィルとメニルモンタンにやって来た。当時はブルジョワから危険視され、多くのパリジャンから無視されていた「村」だったが、ロニスは一目惚れし、住民たちの日常生活を撮り始めた。こうしてできたのが最初の写真集 「ベルヴィル・メニルモンタン」。つましくも気楽に暮らす住民と写真家のあいだに隔たりはなく、仲間や家族を撮っているような印象を受ける。
オープニングの日、会場の20区文化センターでは、住民たちが失われた昔を思い浮かべ、現在の街並みと比較して見入っていた。本展はロニスの初期から晩年までの作品をカバーしており、工場ストなどの社会的な写真や外国での出来事を撮ったものもある。どんな場面にもロニスのスタイルが感じられる。日常の風景には人々の小さな幸せが表れている。それが自分のことのように思えてくる、まれにみる写真展だ。(羽)
9月29日まで。日月休。入場無料。
Pavillon Carré de Baudouin
Adresse : 121 rue de Ménilmontant, 75020 Parisアクセス : M°Pelleport/Ménilmontant