欧州連合(EU)の27加盟国の首脳が5月30日にブリュッセルで協議し、ロシアの原油・石油製品の禁輸措置について合意に漕ぎつけた。この第6弾の制裁は欧州委員会が5月4日に提案したものだが、ハンガリー、スロバキアなどの反対で宙に浮いた形になっていた。
合意によると、ロシアの原油・石油製品の禁輸を、当面は船舶輸送分のみに限定する。原油は6ヵ月以内に、石油製品は8ヵ月以内に禁輸となる。自国の消費量の75~100%をロシアから輸入するハンガリー、スロバキア、ブルガリアは陸上パイプライン輸送のロシア石油を輸入し続けることができるが、ドイツとポーランドはパイプラインによる輸入を停止する意向のため、8ヵ月後にはロシアからEUへの輸入の9割が停止することになる。パイプラインによって輸入できる期限は未定で今後の話し合い次第。ハンガリーは当初、5年間の禁輸猶予と、石油精製施設建設へのEUの資金援助を求めていた。石油インフラへの援助も今回約束された模様だが、数字は明らかにされていない。また、ハンガリー、チェコ、スロバキアはパイプライン輸送がカットされた場合は、クロアチアに陸揚げされる原油を輸入できること、石油輸送を行なう海運国ギリシャ、マルタ、キプロスはEU域外に売るロシア原油を輸送し続けることができる。こうした様々な譲歩によって合意が成立した模様だ。
制裁第6弾のその他の措置としては、EU入域禁止者のリストに、ロシア正教会の最高指導者キリル総主教(ハンガリーの反対で6月2日にリスト除外)を含む約60人を新たに追加、ロシアの主要銀行であるズベルバンクなど3銀行を国際金融取引システム「スウィフト」から排除すること、ロシアの国営テレビ3局のEU内活動禁止も含まれる。
次なる制裁の交渉はロシアのガス禁輸になるが、EUのロシアへの依存が石油よりも大きいため、難しい交渉になりそうだ。(し)