
マクロン大統領は3月2日、ブルターニュ半島西端のロング島仏海軍基地で演説し、今後、欧州諸国の同盟国にフランスの核抑止力を拡大するとともに核弾頭の数を増やす考えを示した。
「新たな核兵器の時代」
大統領は冷戦後の緊張緩和の時代は終わったとし、核軍縮の国際協定や枠組みが弱体化し、紛争が増加したために新たな「核兵器の時代」に突入したと説明。そこで、欧州諸国との防衛協力体制を背景にした「進化した核抑止力 dissuasion nucléaire avancée 」という新たな概念を披露。英国(核保有国)、独、ポーランド、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スウェーデン、デンマークの8ヵ国がすでにこの案に賛同し、ほかの国々とも協議中だという。
とはいえ、核弾頭や核搭載の戦闘機を仏国外に配備することは想定しておらず、人工衛星やレーダーによる脅威の察知、対ミサイル/ドローンシステムの強化や情報収集などで緊密に協力する。マクロン大統領は、「進化した抑止力」は北大西洋条約機構(NATO)の抑止力に代わるものではなく、補完するものだとした。また、核兵器使用の最終的な決定権はフランス憲法にしたがってフランス大統領だけが有するため、仏国家の核抑止力の主権は守られるという。
さらにマクロン大統領は、新たな原子力潜水艦「アンヴァンシーブル(無敵)」の建造が2036年に完了する予定と明らかにしたほか、核弾頭数を増やすと発言。ただし、これまではその数に言及することもあった(推定290発)が、今後は明らかにしない方針だ。ちなみにストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、米国とロシアはそれぞれ1700発、中国は600発、英国は225発を有するという。
欧州の防衛は欧州で、の機運。
フランスは過去にも欧州の共同防衛構想をEUに提案してきたが、各加盟国と米国との異なる関係性やNATOの存在から、他国からは消極的な意見が多かった。しかし、トランプ政権がNATOや欧州防衛への関与を縮小したい姿勢を見せていることや、グリーンランドの領有を主張した経緯などから、欧州の防衛は欧州で、という機運が欧州諸国で高まっていることも確かだろう。
マクロン大統領は3日、米国とイスラエルのイラン攻撃の第1の責任は、危険な核開発計画を進め、隣国のテロ集団に資金や武器を供給してきたイランにあるとしながらも、イラン攻撃は国際法に違反していると英独とともに明言する、と発言。さらに、EU加盟国であるキプロスにある英軍基地がイランの攻撃を受けたことから、防空体制の強化およびフリゲート艦「ラングドック」をキプロスに派遣し、空母「シャルル・ドゴール」も地中海に派遣すると述べた。
さらに、フランスはアラブ首長国連邦、カタール、オマーン、クウェートなどと相互防衛協定を交わしているため、これらの国が攻撃を受けたら防衛目的でのみ参加する義務があるため、ラファール戦闘機や対空防衛システム、航空レーダーなどを同地域に配備したとも明らかに。湾岸地域にいる40万人のフランス人の避難も同日始まったが、イランへの攻撃が長引けば、それだけ仏の関与も長引く。エネルギー価格の上昇など経済への影響も懸念されるため、イラン・中東情勢から目が離せない。(し)
