パリの風景のシンボルともいえる、ライトグレーの亜鉛製の屋根。その屋根葺きと装飾職人の技術 (Les savoir-faire des couvreurs-zingueurs parisiens et des ornemanistes )が12月4日、ユネスコの無形文化遺産に登録された。
亜鉛板を使った屋根は19世紀、オスマン=セーヌ県知事のパリ大改造の際にスレートとともに使われるようになり、石造りの建物を覆う亜鉛はパリの屋根全体の8割に使われ、パリの風景の一部として親しまれている。
もともとは2014年にパリの亜鉛屋根とその職人をユネスコの世界遺産に登録しようという声が上がったものの、その後それらの職人の技を無形文化遺産に申請するほうがよいとされ、フランス政府は2023年3月に正式に候補として申請。この無形文化遺産登録を契機に、屋根葺き職に若い人を惹きつけたい意向もあるようだ。パリにはおよそ5千~6千人の屋根職人がいる(ノートルダム大聖堂の修復にも参加した)が、慢性的な人手不足に陥っている。一方で、地球温暖化により近年は夏の亜鉛屋根の過熱が問題視されてもいる。職人にとっても炎天下の作業は困難なため、将来的な対策が求められている。
フランスのユネスコ無形文化遺産としては他にも、フランスの美食、バゲットパン、グラースの香水製造技術、オービュッソンのタピスリー、ブルターニュの伝統的祭フェスノーズ、ノルマンディー地方グランヴィルのカーニヴァル、中世から職能を伝達する制度コンパニョナージュなど28件が登録されている。(し)